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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第10章 【underground】


「グレイン、クリス」
「はい」

 しかしクリスが返事をした時には、すでにスネイプの視線は名簿に移っていたので、それに関しては特にクリスも気に留めなかった。そんな些細な事よりも、スネイプがハリーの名前を呼んだ時、その時の方がよっぽど気にとめる必要があった。

「ポッター、ハリー・ポッター。我が校の……そう、新しい――スターだね」

 気色の悪い猫なで声でそう呼ぶと、スリザリンからは冷やかすような笑い声が聞こえ、ロンを挟んで反対側に座っていたハリーはかすかに赤くなりながら顔を歪めた。詳しい事は分からないが、スネイプがハリーを好ましく思っていない事だけは確かだ。

 名簿を全て読みあげると、スネイプはカーテンのように目の半分を遮る前髪の分けめから、深い沼を思わせる冷たく暗い眼で生徒達を見回した。

「この授業では杖を振り回すような無粋なことはしない」

 今度は一番初めと同じく、生徒を畏縮させる力を持った低い声で喋り始めた。どうやらあの猫なで声は、ハリーをからかう時専用らしい。

「浅才な諸君らの中にはそれが魔法かと疑う者も多いだろう。大なべの中で煮える液体、ゆらめく細い湯気、躯の隅々まで行き渡り人間を内部から支配する力。時には心を惑わせ、五感を狂わせる神秘の魔法、それこそが魔法薬学だ。我輩が教えるのは名声を醸成し、栄光を瓶につめ、死にさえ蓋をする方法であるが――ここにいる全ての者が、それを真に理解できるとは思っておらん」

 父とスネイプが似ているのは一見の雰囲気だけで、その他はあまり似ていないようだった。少なくとも父はこんなに饒舌ではないし、初めから人を見下したような話し方はしない。それに良く見れば顔だって父に遠く及ばないし、髪だって何日も洗っていないような油のべっとり付いた不潔な髪はしていない。それなのに何故、何故父とスネイプが被って見えてしまったのか。

「ポッター!!」

 尊大な演説の直後、大きな声でスネイプがハリーの名を呼んだ。

「アルフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えるとどうなる」

 とっさにクリスの頭の中で「アルフォデルの球根とニガヨモギの混合物が出来る」という答えをはじき出したが、こんな物ではスネイプ先生の御気に召さないのは先ほどの演説を聞かなくても分かっていた。
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