第9章 【予想外】
クリスの言葉をどう捉えたのか、今日の授業ですっかり自信をなくしたハリーとロンはうな垂れながら答えた。ほぼ0からスタートしたロンやハリーに比べて、クリスの聞きかじっただけの知識でも無いよりはマシという正直目くそ鼻くそ並みの頭脳でも、彼らには羨望に値するらしい。
「良いわけないだろう、見たか今日のグレンジャーを。私の頭が本当に良かったらあいつにあそこまででかい顔をさせなかったのに」
「あれは別物だよ、あそこまでいくと羨ましいよりも胸糞悪い」
どうやらロンもクリスと同じで、おおっぴらに知識をひけらかすグレンジャーに、苛立ちを感じていたようだ。そして同じくグレンジャーを鬱陶しく思うものは、日を追うごとに増えていった。
それもそのはず、ほとんどの授業で、グレンジャーは誰よりも素早く手を上げて暗記した教科書の内容を披露するので、1週間とたたずにグリフィンドールの同級生のほとんどがグレンジャーの事を「知ったかぶりのハーマイオニー」と呼ぶようになっていた。
この約一瞬間で様々な授業を受けたが、その中でクリスの気に入ったものは1つしかなかった。当然「知ったかぶりのハーマイオニー」のおかげで、上記の2教科は省かれる。
薬草学の授業はハッフルパフの寮監でふくよかな魔女が担当している。授業内容は泥まみれになりながら種をまいたり、奇怪な動きをする植物に水をやったり、鉢から植え替えたりと、屋敷しもべのチャンドラーなら喜んでやるだろうが、仮にもお嬢さま育ちのクリスに向いている授業とはいえなかった。草花を見たり触れたりするのは好きだが、育てるとなると全く別問題になってしまう。
しかも当然この授業でもグレンジャーが手を上げるのを止めさせられる者など存在せず、クリスは怒りと不慣れな作業で毎回手元が狂って、ハリー達に要らぬ手間をかけさせていた。
闇の魔術に対する防衛術では、教室内にいつもにんにくの腐ったような強烈な異臭が充満していて、心地よく授業など受けられなかった。うわさによるとクィレル先生は夏休み中に吸血鬼に襲われ、その恐怖心からターバンに大量のにんにくを隠し持つようになり、そのにおいが中りに漂っているのだという。