第9章 【予想外】
ロンの言葉にクリスは不思議そうに首をかしげた。
経過は変わってしまったが、結局はハリー達の気も知らずのん気に紅茶を嗜むクリスの姿を拝む事となり、ハリーはもう乾いた笑いしか出なかった。
紅茶だけの朝食を終えると、いよいよ授業の時間がやってきた。記念すべき一番初めの授業は寮監でもあるマクゴナガル先生の変身術の授業で、始めの10数分に組分けの時と同様に厳しい雰囲気で生徒を圧倒しつつ授業の諸注意を説明し、その後は膨大な量の書き取り作業を行わせた。
初めて触れる学問としての魔法に、マグル出身の子のみならず魔法族出身の子もその複雑な魔法の仕組みに音を上げていた。
もちろん自称読書家で知識には自信のあるクリスといえども、例外ではなかった。所詮家で自分好みの勉強しかせず、クリスはここに来てやっと己の知識がいかに中途半端で役に立たないかを知った。
だが先日コンパートメントで自ら才能を自賛しただけあって、ハーマイオニー・グレンジャーだけが他の生徒とは違った。先生の話が少しでも途切れた瞬間を見逃さずにすかさず手を上げ、得意げな顔で出題に答えた。またマッチ棒を針に変える実技でも、グレンジャーただ一人だけが完璧にこなしてみせ、マクゴナガル先生から滅多にない微笑を向けられていた。
その次の呪文学の授業でも同じことを繰り返し、フリットウィック先生から十分予習を行ってきたと褒められ、グリフィンドールに5点を追加させ自慢そうに頬を染めていた。
その相変わらずのでしゃばりに、クリスは1日の終わりの夕食には朝よりももっとグレンジャーのことが嫌いになっていたのは、もはや言うまでもないだろう。
「勉強が何だって言うんだ、腹が立つ!」
サラダに盛り付けられたトマトに今日1日の怒りをぶちまけた。自分が予想よりもずっとバカだったという事も少なからずショックだったし、グレンジャーがクリスを遙かに上回る頭脳の持ち主だったというのも屈辱的だった。
「そりゃ良いよね、クリスは」
「なんだかんだ言って、頭が良いもんな」