第9章 【予想外】
「ねえ、あの2人の間に何があったのか知ってる?いくらハーマイオニーがクリスを男の子と間違えたからって、ロンのお兄さんが間違えた時とは比べ物にならない剣幕で怒ってたのよ」
「……クリスとハーマイオニーはね、列車の中で一度喧嘩してるんだよ。僕もハーマイオニーってあんまり好きじゃないけど、クリスはそれ以上だな。とにかく気が合わないなんてもんじゃない、相性最悪だ」
それに加え、自分達がクリスを男の子と間違えた時でさえ相当怒っていたのに、印象最悪のハーマイオニーがその禁句を口にしてしまったというのだ。彼女の機嫌の悪さは計り知れない。
こうなったらハリーの言うとおり、一生眠ってもらった方がクリスも、その周りの人間も被害が及ばなくて幸せかもしれない。勿論、そんな訳にはいかないが。
とにかく起きて来ないクリスを待って、朝食をとり損ねるなんて事はご免だというロンの主張に従い、ハリーたちはクリスを置いて大広間へと向かった。
ホグワーツの朝食はもちろん昨夜のディナーほど豪華ではなく、ごくごく普通の一般家庭料理ではあったが、ダズリー家で食べたパンの耳や野菜の切れ端などの惨めな朝食に比べれば文句なしの立派な朝食だった。
ハリーもロンも思う存分朝食をとり、かぼちゃジュースで胃を整え一息つき始めた頃、やっとクリスが大広間に姿を現した。自分の身長以上もある杖を引きずり、眉間にシワを寄せた表情でハリー達の向かいに座ると、何も言わずに紅茶を注ぎ始めた。
「お、お早うクリス」
「……あぁ」
「急いで食べないと、もうすぐ授業が始まっちゃうよ?」
「……あぁ」
ハーマイオニーとの一戦で相当機嫌が悪いのか、クリスはハリーとロンに顔を合わせようともせず、ティーカップの底を眺めながら単調に相づちを打つだけだった。
「聞いたよ、ハーマイオニーと同室なんだって?」
「……あぁ」
「それで機嫌が悪いの?」
「……あぁ」
何を言っても同じ反応しか返ってこない。テーブルに並べられたどの料理にも手をつけようとせず、黙ったまま紅茶を飲む姿は、ハッキリ言ってかなり不気味だ。
クリスの場合、その容姿も相まってまるで壊れたカラクリ人形のようである。どうにかクリスの注意を引こうと、ハリーは色々と話しかけてみた。