第9章 【予想外】
「遅いなあ、クリスのやつ。何やってるんだろう」
入学式から一夜明けた午前8時、ロンとハリーはグリフィンドールの談話室でクリスが降りてくるのをもう20分近くも待っていた。一緒に朝食をとろうと思って待っているのだが、一向にクリスが降りてくる気配は無い。
「もう先に行っちゃったんじゃないの?」
「僕らを置いて?まさかそんな――とは言い切れないな、クリスの場合」
彼女の性格を考えると、自分の空腹をおしてまで健気に他人を待つなんて事をするだろうか。せいぜい彼女なりの気遣いといったら、先に朝食をとりつつ席を確保しておくくらいが関の山だろう。
グリフィンドールのテーブルで、ハリー達の気も知らずに「なんだ、随分遅かったな」なんて優雅に紅茶を飲みながら挨拶をする様がありありと浮かんできた。
「……もう行こうか」
「あら、ハリー!」
なんだか今まで待っていた自分達が馬鹿らしく思え、2人は談話室を出ようと肖像画の穴に向かったその時、後から声をかけられ、振り返るとそこには昨日の歓迎会でクリスの隣に座っていたラベンダーがいた。そしてその隣には、昨夜とおなじくパーバティもいる。
「クリスを待ってるの?だったら無理よ、あの子まだ寝てるもの」
「まだ!?だってもうすぐ8時だぜ。朝食は8時半までなのに!」
「一応私達も部屋を出る前に声をかけてきたけど……あの様子じゃ、先に行った方が良いわよ」
「あの様子」がどんな様子かは知らないが、どうやら2人の呆れ具合からして相当手を焼いてくれたらしい。クリスって見た目と違って結構はた迷惑な性格してるわよね。とラベンダーはため息を吐くと、パーバティもそれに同調した。
「そうそう、昨日の夜も凄かったのよ。部屋に入った瞬間、いきなりハーマイオニーって子と口喧嘩始めるんだもの。私もつい頭にきて怒鳴ってやったわよ」
「ハーマイオニーと同室!?それじゃクリスにとっては一生眠っていたほうが幸せだね」
自分はロンやネビルと言った平和なルームメイとに恵まれたが、クリスはハーマイオニーという最悪の組合せを引き当ててしまったらしい。昨夜勃発したという2人の口喧嘩が、容易に想像できてしまう。