第8章 【BAD END】
組分けの一件とあざの一件によって機嫌の悪くなっていたクリスは、グレンジャーの一言でついに怒りの頂点に達した。
「コンパートメントで忠告してやった事がまだ分かっていないらしいな、グレンジャー。そのでかい歯を見せる前に少しはご自慢の頭を使ってみろ。それともなんだ、無理に教科書の内容を詰め込みすぎて、他の事は考えられないのか?」
「なんですっ……!!」
何か言い返される前に、クリスはしっかりと留めていたローブの前を乱暴に開いた。そこに現れた自分と変わらぬ女子用の制服を着たクリスの姿を見て、グレンジャーは目を大きく見開いて息を呑んだ。その驚いた様子すらも、クリスの怒りをより燃え上がらせるだけだった。
「私は女だ。ここに入ってきた時点でそれくらい気づけ、この口先ばかりの能無し女!」
その言葉に逆上したグレンジャーは、凄むクリスに怯むことなく目前に立ちはだかった。太い眉をキリリと上げ、唇を噛み切らんばかりにギュッと引き締めてクリスを睨みつけてくる。
「……貴女を男の子と間違えた事は謝るわ。でも貴女にそこまで馬鹿にされるいわれは無いわね、貴女の方こそもう少し『口の利き方』というものを学んだ方が良いんじゃない?」
「“謝る”という割には随分と偉そうだなグレンジャー。それともお前の中では謝るとは、偉そうにふんぞり返って相手に非を負わせる事なのか?」
「なによ!!自分の非を認めないのは貴女の方で――」
「2人ともいい加減にして!!!」