第8章 【BAD END】
監督生が肖像画の女性に向かって合言葉を唱えると、額縁が蝶番のように開き、壁にぽっかりと開いた穴が現れた。その穴をくぐると、レンガ造りの暖炉に座り心地の良さそうな肘掛け椅子、ふかふかのソファーが並ぶ円筒形の部屋に入った。
「ここがグリフィンドールの談話室だ、自由時間はここを使うといい。それじゃあ女子はそっちの階段を、男子はこっちの階段だ。ほら早く!」
てきぱきと新入生を仕切る監督生にせかされ、クリスはハリーとロンにろくに挨拶も出来ないまま女子寮に続く扉をくぐった。
クリスの前を歩くパーバティとラベンダーはすっかりお腹がいっぱいになって眠いのか、一言も喋らず、時折目をこすりながらゆっくりと歩き、クリスも思い返せば今日一日で、屋敷で過ごす3か月分ほどの濃い経験をしたことで疲れ果て、もうベッドに入って疲れを癒す事だけを考えて螺旋階段を上った。
「さあ、あなた達はこの部屋よ」
いったいどこまで続くのかと思われた長い螺旋階段を上り、ようやく案内された部屋は嬉しいことにラベンダーとパーバティと同室だった。しかし、人生万事が万事上手く運ぶわけがない。ほっと息をついたのもつかの間、扉の先にはより強力な不幸の元凶が待ち構えていた。
「あら、貴女達がルームメイ――なっ、なんであなたがここにいるの!?ここは女子寮よ!!」
ぼさぼさの茶色の髪を振り乱し、大きな前歯を覗かせながら至極失礼な一声を発したのは、ホグワーツ特急で出会って以来最悪の印象しかない女、ハーマイオニー・グレンジャーだった。