第8章 【BAD END】
しかし、だからといって今起こったことを、おいそれと相談して良いものだろうか。事の原因が分からないのはどうにも不安だが、だからといって痣の事を他人に教えるリスクは大きすぎる気がする。
「なんでもない。ただちょっと、人ごみに疲れただけだ」
ハリーには悪いが、この場は適当に濁すことにした。この11年間隠し通してきた秘密を素直に話してしまうほど、クリスの口は軽くない。
結局クリスはそれ以上何も言わず、パーティーが終わるのをただひたすら黙って待っていた。
ついにデザートもなくなり、金の大皿が最初と同じく空っぽのぴかぴかになると、ダンブルドア再び立ち上がり、閉会の挨拶をかねた注意事項を生徒達に告げた。――授業の合間の魔法禁止、校内の森への立ち入り禁止などごくありふれたものばかりだったが、最後の一つはそれらとは少し違った。
「それと、今学期中はくれぐれも4階の廊下に入らないように。とても痛い死に方をしたい人は、別じゃがな。――では最後に全員で校歌を歌って仕舞いにしようかの」
ダンブルドア校長の指揮の下、それぞれ違うメロディーで生徒達が好き勝手に歌いだした。ごちゃごちゃと歌声の飛び交う中、クリスは一人黙って先ほどダンブルドアが言った事を考えていた。
ホグワーツにある隠された扉、入るものを選ぶ、死の部屋――どこかで聞いた事があるのだが――前後左右から聞こえる滅裂な校歌に気が散り、とてもじゃないが考え事なんて出来る状況ではなかった。
曲の最後をウィーズリーの双子がとびきり遅い葬送曲でシメると、大拍手で歓迎会は幕を閉じた。1年生は監督生に従い複雑に入り組んだ廊下を抜け、タペストリーの裏をくぐり、長い階段を上ると、ようやく目的の場所と思われる1枚の女性の肖像画の前にたどり着いた。
「中に入るには合言葉が必要なんだ、くれぐれも忘れないように。“カプ~ト・ドラコニス”」