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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第8章 【BAD END】


「あのターバンの先生は知ってる。クィレル先生って言ってね、入学用品を買いに漏れ鍋に来た時にばったり会ったんだ。たしかハグリットの話しだと、闇の魔術に対する防衛術の先生だって」
「そ、そうか……」
 
 手首のあざに感づかれたのではないと分かると、クリスは深い安堵の息をついた。幼い頃から頑なに守ってきた父との約束を、まさか入学1日目にして目撃されるなんて事はあってはならない。 
 クリスはハリーが本当に教職員テーブルに興味を持ち出したスキに、さっと左手をローブのポケットにつっこみ、何事もなかったかのように再び教職員テーブルを注目した。

「それでどんな人だった?そのターバンの先生は」
「言っちゃ悪いけど、変な人だったかな。変にビクビクしてて、しょっちゅうどもってたよ」
「なるほど、丁度あんな感じ……っ!?」

 それは突然の事だった。隣に座る黒ずくめの男と話すクィレル先生の姿を見たとき、突如左の手首が疼きだし、底知れぬ不安がクリスの体を取り巻いた。まるで蛇に睨まれたカエルの様に身動き一つ出来ず、額に掻いた汗をぬぐう事も、声を出す事もできない。
 今まで感じた事のない恐怖に震えながら、クリスは必死に助けを求めた。
誰でもいい、誰か早く助けて!

「――っ痛!」

 その小さなうめき声を聴いた瞬間、催眠術が解かれたかのように一瞬で金縛りが解け、体を取り巻いていた不安も消え去った。もちろん、手首の疼きも止まった。
 そして声の主はクリスの隣りで少し身をかがめ、額を押えて顔をしかめている。

「ハリー、どうした!大丈夫か?」

 とにかく理由は分からないが、どうやらハリーの一声のおかげで助かったみたいだ。だがそのハリーが今度は眉をひそめ、稲妻形に刻まれた傷跡を押さえ苦しんでいる。ハリーは痛みを紛らわすようにコブシでぐりぐりと傷をなすりつけると、ゆっくりと顔を上げてクリスと目を合わせた。

「……うん、大丈夫、みたい。クリスの方こそ顔色悪いよ、平気?」

 心配そうに見つめるハリーに、クリスは答えあぐねた。他の生徒を見ても他に苦しがっている者はいない。おそらくあの一瞬教職員テーブルに目を向けていたクリスとハリーだけが謎の感覚に襲われたようだ。
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