第8章 【BAD END】
豪華な夕食に引き続き、美味しそうなデザートが現れると、ラベンダー達はおしゃべりよりもデザートに夢中になり、逆に男の子達はそれまで食べていた肉厚なステーキやポテトが効いてきたのか、今度は話す片手間にデザートを口に運ぶようになった。
「僕の家は母さんが魔女で、父さんはマグルなんだ。母さんは魔女だって事を隠していたから、父さんはその事を知った時そうとう驚いたらしいよ」
ロンの向かいに座っていた黄土色の髪の少年の一言がきっかけに、皆は家族の話題で持ちきりとなった。両親とは死別し、親戚からは除け者として扱われてきたハリーにはあまりに酷な話題だ。教職員テーブルに興味を持ったふりをして話題から視線をそらしているハリーに気づいたクリスは、ハリーの背中を軽く叩いた。
「どうしたハリー、デザートがお気に召さないのかな?」
「ううん、そうじゃないよ。だた……先生達が気になったんだ。どの先生がどの教科を担当してるとか、ぜんぜん知らないだろ?」
「そういえば、私も知っているのは校長のダンブルドアくらいだ」
ハリーに合わせて、クリスも先生達に視線を移した。複雑な家庭環境なのは、クリスも変わらない。できれば深いところまでつっこまれたくない事実も、いくつか持っている。例えば先ほど、組分け帽子に言われた事とか――
(どんな力も、どんな野望も感知できる。例えばそう…君に眠るもう一つの力も)
(これは私とお前を繋ぐ印だ、だが誰にも見られてはいけない)
あんなみすぼらしい帽子の言う事など気に病むのも癪だが、事実、公に記すことなく伝えられてきたグレイン家の歴史は、多くの謎と闇に包まれている。それらが組分け帽子の言った「眠るもう一つの力」に関係しているのは想像に難くない。
クリスは人知れず、ローブの上から左手首のあざに触れた。
「あっ!!」
「ど、どうしたハリー!?」
間の悪い時にハリーが声を上げたので、クリスは必要以上に驚いた。もしかして手首のあざを見られたのかという予感が頭をかすめ、額にうっすらと冷や汗が浮かんでくる。
しかしハリーの答えはまったく別のことだった。