第8章 【BAD END】
深く肩をおろして気持ちを落ち着けるハリーに、空けておいた隣の席を勧めた。これが彼女流の親愛の表しなのだ。下手に言葉に出すよりも、こういった些細な行動の方がよっぽど素直に差し出せる。ただし、少し他人には分かりづらいかもしれないが。
クリスの隣で紹介して欲しそうにモジモジしていたラベンダーにハリーを紹介すると、残りの組分けに集中した。
――T、U、Vと順調に組分けが終わり、ついにロンの出番がやってきた。後ろの方で双子達がピューピューと口笛を吹いてはやし立てると、ロンは髪の毛に負けないくらい顔を真っ赤にして帽子を被った。
その組分けを見ながら、すでに3人揃った楽しい学園生活を想像していたクリスは、ハリーに隣の席を1つとっておくように伝えた。現実よりも先に、妄想が先行してしまうのはクリスの悪い癖である。隣で心配そうに組分けを見つめるハリーとは、実に対照的だった。
しかしハリーの心配もあっけないほど、ロンの組分けは直ぐに終わってしまった。流石に兄弟揃ってグリフィンドールに選ばれただけあって、ロンも例に洩れずすぐにグリフィンドールの名前を叫ばれ、これで晴れて3人揃って同じ寮に成る事が出来た。
「3人同じ寮になれたのは良かったけど……ジョージとフレッドと一緒ってのは少し鬱陶しいかも」
崩れるようにハリーの隣に腰掛けたロンは、開口一番そう呟いた。今も後からはやし立てている双子に、少々おかんむりのようだ。
ロンにラベンダーを紹介している間に残り僅かだった生徒の組分けが終わり、マクゴナガル先生がスツールと組分け帽子を片付けると、教職員テーブルの真ん中に座っていた長いひげを蓄えた年老いた魔法使いが立ち上がり、おもむろに両手を開いた。
「新入生諸君、入学おめでとう!そして在校生の皆、お帰り。すでに空腹でご馳走を待ちわびている生徒には悪いが、わしから二、三挨拶を言わせて貰いたい。では――あ・そ~れ!わっしょい!こらしょい!どっこらしょいっ!以上じゃ」
ホグワーツ史上最高の校長と称えられるアルバス・ダンブルドア。幼い頃からその才能をいかんなく発揮し、今の魔法界にも数々の功績を残している類い稀なき天才であると専らの評判だったはずだが……これは少々見方を変えなければならないらしい。