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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第8章 【BAD END】


「――ポッター・ハリー!」

 ついにハリーの番が回ってくると、それまで会話を楽しんでいた生徒達が一瞬会話をやめ、そしてまたすぐにざわめきたった。

「今ハリー・ポッターって言った?」
「じゃあ、あれがあのハリー・ポッター?」

 いまや全校生徒の噂の的になっているハリーは、緊張のあまりロボットのような固い動きで帽子に近づいていった。その様子を、クリスはグリフィンドール席から固唾を呑んで見守っていた。
 他のどの寮の生徒も、目を大きく見開いてハリーの組分けを見つめ、自分達の寮に入ってくれる事を望んでいる。それだけハリー・ポッターという名前は絶大な影響力を与えるのだ。

「ねっ、ねえクリス、あれハリー・ポッターだって!」
「知ってるよ。一緒のコンパートメントだったんだ」
「そうだったの!?……出来ればうちの寮に来てくれないかしら」

 ラベンダーがため息混じりに呟いた。それはクリスだって同じだ、出来ればグリフィンドールに入って欲しい。それはハリーが有名な『生き残った男の子』だからではなく、自分を認めてくれた友人だからだ。
 例え寮が離れても友達である事には変わりないが、出来ればハリーとロンと3人同じ寮で楽しい生活を送りたい。それはつい最近までろくに友達がいなかったクリスにとっては、これ以上に無い贅沢であり夢なのだ。

 ハリーの組分けが始まってから、どれくらいの時間がたっただろうか。2千以上の目がギラギラと帽子に注目している中、ついに帽子がぷるぷると小刻みに動き出して寮の名前を叫んだ。

「――グリフィンドールッ!!」

とたんに爆発的な拍手がグリフィンドールのテーブルから巻き起こり、中には椅子の上に立ってガッツポーズを上げている生徒までいた。隣のラベンダーは嬉しそうにクリスの肩を揺さぶりながら「やった、やったわ」と繰り返している。

 クリスは他の生徒のように手放しで喜びを表す事はせず、こちらに近づいてくるハリーに微笑んで迎えるだけだった。

「おめでとう、ハリー。これで後はロンだけだな」
「本っ当に良かったよ。……実はもう少しで別の寮に入れられるところだったんだ」
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