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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第1章 【深窓のご令嬢?】


 しかし、クリスの受難はこれだけでは終わらなかった。安心しきって暖炉から這い出てみると、そこに待ち受けていたのは苦い顔をした老しもべ妖精だったのだ。

「お嬢さま、今まで何処へおいでだったのです?」
「あっ、いや……これは、その……」
「何処を探してもお姿が見えないのでまさかとは思いましたが……それにそのお怪我。煙突飛行を使って、一体どこで、何をしておいでだったのですか?」

 万事休す、暖炉から出てきたところを見られてしまっては、言い訳も出来ない。だからと言って全部を話すわけには行かない。となれば、とるべき道は唯一つ。クリスは冷や汗を流しながら、とっさに嘘をでっち上げることにした。

「にっ、庭で遊ぶのにも飽きたから……煙突飛行粉で遊んでたんだ。――そしたら変なところに行き着いちゃって……いのっ、命からがらやっと帰ってこれたんだ!」

 ――所詮は子供の浅知恵。この日の説教は2時間にも及び、しまいには罰として1ヶ月間煙突飛行使用禁止令を出された。

* * *

「――であるからして、代々グレイン家というのは由緒正しき血統を持つ素晴らしい純血の家系であり、ご主人様もご幼少の頃から勉学に励み、もちろんホグワーツでも跡取りとして立派な成績を修め……お嬢さま、聞いていらっしゃいますか?」
「ああ、聞いてるよ」

 いつの間に話しが家の話しになっていたのか。クリスはうんざりした様に答えたが、本当はほとんど聞いていなかった。
 
 適当に相槌を打ちながら、再び目の前のお菓子に手を伸ばし、自分で紅茶を注ぐ。この説教がいかに長いかを示すように、口に含んだ紅茶はもう大分冷めていて、クリスは不機嫌そうに眉根を寄せた。

「だから私だってこうして父と同じように勉学に励んでいるんじゃないか。さっきのはちょうど一休みしようとしたところに、お前が入ってきただけだ」
「お嬢さまのは、勉強とは言いません!!」

 言わなければいいものを、クリスはつい堪りかねて口を出してしまったがために、せっかく沈静化してきていたしもべ妖精の怒りの熱がまた上昇してきた。彼にとってはどうしても先ほどまでクリスが読んでいた『世界のマグル達の名言集』がお気に召さないらしい。
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