第7章 【帽子の王様】
「隣り、いいかしら?」
不意に声をかけられ、クリスはパッと顔を上げた。見ると可愛らしい感じの女の子が、隣の椅子に手をかけている。確か、組分けの時1番初めにグリフィンドールに選ばれた子だ。
「あ、ああ。どうぞ」
「ありがとう。女の子が私しかいなくて、少し不安だったの。私はラベンダー・ブラウンよ。あなたは?」
「クリスッ、クリス・グレインだ。よろしくラベンダー」
嬉しい事に、ラベンダーは一目でクリスを女の子だと分かってくれた。仲良く会話をしていたハリーとロンでさえ間違えていて少し自信をなくしていたから、ラベンダーの言葉が余計に心にしみる。
差し出された白い手を握ると、今までの緊張が一気に抜けたような心地がした。
「ねえ、クリス……あっ、クリスって呼んでもいい?」
「もちろん。その代わり私もラベンダーって呼ばせてもらうよ」
「ええ、もちろん良いわよ。それでクリス、私ずっと気になってたんだけど、あなたの持ってる――」
「グレンジャー・ハーマイオニー!」
その名前が呼び上げられるや否や、クリスはラベンダーに向けていた顔を勢い良く組分け儀式の方に移した。グリフィンドールに選ばれた驚きとラベンダーとの出会いでですっかり忘れていたが、まだこの女の問題が残っていた。
待ち切れない様子で自らグイッと帽子を被ったグレンジャーを見ながら、今までとは逆に「どうかグリフィンドールには来ないでくれ、グリフィンドールには来ないでくれ」と強く、強く願った。
「グリフィンドール!!」
だがクリスの願いもむなしく、組分け帽子は高らかにグリフィンドールの名前を叫んだ。嬉しそうにテーブルに走りより、パーシーと楽しそうに話しているグレンジャーを見ながら、もしかしたら組分け帽子はこの為に自分をグリフィンドールに入れたんじゃないだろうかとさえ疑った。
話しの最中にいきなり組分けに意識を取られ、たちまちガックリと肩を下ろしたクリスに、ラベンダーが心配そうに声をかけた。
「どうしたの、クリス。何かあった?」
「いや……これが話すと長くなる――んがっ!?」
「いようっ、クリス!おめでとさん!!」