第7章 【帽子の王様】
この選択によってどんなに辛く厳しい未来になるかは知らないが、仕組まれた道を歩くだけの人生よりはよっぽどマシだろう。
「決まっている。運命に抗う道だ」
「よろしい、君がそれを選ぶのなら――グリフィンドールッ!!」
帽子が寮の名前を叫ぶと、拍手の渦がクリスの体を包んだ。特にライオンの赤い寮旗が掲げられたテーブルからが1番熱い歓声が上がっていて、赤と金のツートンカラーのネクタイを締めた生徒達がこぞって手招きしている。
「さ、グリフィンドールのテーブルはあちらです。まだ組分けの終わっていない生徒もいるのですからお急ぎなさい」
マクゴナガル先生に背中を押され、クリスはゆっくりと歩き出した。沢山の上級生がクリスに向かって温かい言葉を投げかけてくれているが、それらは全くクリスの頭に入っていかなかった。そんな事よりも先ほど組分け帽子が叫んだ言葉が、何度も頭の中を駆け巡っている。
(――グリフィンドール…グリフィンドール……今あの帽子はグリフィンドールって言ったのか?本当にグリフィンドール?レイブンクローじゃなくて?)
テーブルにたどり着くと、真っ先に出迎えてくれたのはどこか見覚えのある赤髪とそばかす顔の男子生徒だった。胸についた金のPバッジを、堂々と見せびらかすように大きく胸を反っている。
「いやぁ、おめでとう!ようこそグリフィンドールへ。僕は監督生のパーシー・ウィーズリーだ、何かあったら遠慮なくいってくれ」
「……ここ、本当にグリフィンドール?私はグリフィンドールに選ばれてしまったのか?」
「そうだとも!君は1番栄誉ある寮に選ばれたんだ、緊張しているのは分かるが男らしくもっと胸を張ったらどうだ」
「あ、ああ……そうだな」
普段のクリスなら「男らしく」と言われて黙っていられなかっただろうが、今のクリスにはそれに気づく余裕すらなかった。グリフィンドールに入れられた事で、とにかく頭がいっぱいだ。
絶対にスリザリンは嫌だったから、それを避けられたのは良かった。だが欲を言えばレイブンクローに入りたかったのに、結果はまさかのグリフィンドールだ。ハッキリ言って、グリフィンドールに選ばれることだけはないと思っていた。 それとも帽子に喧嘩をふっかけたから、わざと合わない寮に入れられたのかもしれない。