• テキストサイズ

ハリー・ポッターと小さな召喚士

第7章 【帽子の王様】


 大きな扉が開かれると、そこには思わずため息をつくような光景が広がっていた。今までに見たどんな広間よりも大きく、天井には本物と見まがえるほど美しい星空が瞬いている。
 しかもそれだけではない。無数のろうそくが宙に浮かび、大広間は眩しいほどの光に満ち溢れ、4つの長テーブルが2列ずつ並び、それぞれの寮の旗が掲げられている。その見事な光景に、しばし組分けの不安など忘れて完全に見入ってしまった。

「……なんて綺――」
「知ってる?あの天井には本当の空に見えるように魔法がかけられているのよ。『ホグワーツの歴史』に書いてあったわ」

 満天の星空にため息を漏らすクリスの斜め後ろから、ネビルに得意げに本の内容を語ってみせるグレンジャーの声が聞こえた。この女には、素直に感動を味わうという事ができないのか。これではまるで美術館で延々と聞きたくもないうんちくをたれられた時のように、完全に気分が萎えてくる。
 クリスは文句を言ってやる代わりに「グリフィンドールに入れグリフィンドールに入れ」と心の中で何度も念じた。

 マクゴナガル先生が3本足のスツールとともに、ぼろぼろでツギハギだらけのかび臭そうなとんがり帽子を持ってくると、すでにテーブルについていた在校生の目が一斉にそちらにむけられた。
いったい何事だろうと、つられるようにして帽子に目をやると、帽子がひとりでにプルプルと動き出し、やがてツバの切れ目が口のように開いた。

     私は綺麗じゃないけれど 他には負けない賢い帽子
     山高帽子もシルクハットも 束になっても敵わない
      私の名前は組分け帽子 ホグワーツ寮の判定者  
        心に潜むどんな物でも この私にはお見通し
              かぶってごらんよ 恐れずに
              叫んで見せよう 寮の名を

 シーンと静まりかえった大広間に、自然と頭に入り込んでくる不思議な帽子の歌だけが響き渡る。そしてその歌から察するに、自分の寮を決めるにはどうやらただ帽子をかぶればいいだけらしい。隣でロンが「フレッドのヤツ、騙しやがって」と舌打ちするのが聞こえた。
/ 375ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp