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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第7章 【帽子の王様】


 母方の出身寮は知らないが、父方はスリザリンの末裔と言われるだけあってスリザリン出身者ばかりだ。ドラコも間違いなくスリザリンだろうし、もしグレンジャーがレイブンクローになったら、残された道はグリフィンドールかハッフルパフの2択だ。しかし正義感溢れるグリフィンドールも平等を唱えるハッフルパフも、どう頑張っても自分に合っているとは思えない。

 頭に詰め込んだ呪文を念仏のように唱えているグレンジャーを人垣の間から睨みながら、クリスはどうかこの女がご希望通りグリフィンドールに入ってくれるよう心から念じた。

 そんな悩める子羊達がひしめき合う部屋の中に、突然スーッと人が現れた。扉も開かず物音一つ立てずに、真珠色に透き通った20名ぐらいの団体様が、なんでもない事のように壁を通り抜けて生徒達の頭の上を過ぎていった。

「ゴーストだ!!」

 それに気づいた生徒の1人が声を上げると、丸々と太った人の良さそうなゴーストが近寄ってきた。

「やあ、君たちは今年の新入生かね。それならハッフルパフで再会できる事を楽しみにしておるよ、わしはそこ出身だ」

 言葉の最後に死人とは思えないほどニッコリと生徒達に向かって笑顔をふりまくと、また頭の上を通り過ぎスーッと壁を抜けて消えてしまった。ホグワーツは魔法学校だから結界やマグル除けなどの多少のカラクリはあるとは思っていたが、まさかさも当然のようにゴーストまで住み着いているとは思わなかった。それもあんなに大勢。

 みんなとっさの出来事にポカンと口を開け、おかげで組分けに対する緊張が薄れた――という訳にはいかなかず、準備を終えたマクゴナガル先生が再び部屋に戻ってくると、部屋中に心臓がひきつけを起こすほど緊張が走った。

「これから大広間に向かい、そこで組分けの儀式を行います。それでは、2列になって私の後についてきなさい」

 どこからか生唾を飲み込む音まで聞こえ、お互いの緊張が緊張をあおっているのを肌で感じた。大広間へ向かう途中、何度手にかいた汗をローブでぬぐったか分からないほどだ。ちらりと横目でハリーを見ると、顔が青ざめ、エメラルド・グリーンの瞳が苔むしてにごった緑色に見えた。

「全員準備は宜しいですか?先生方や上級生も見ています、出来るだけ身なりを整えておいて下さい。では――」
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