第6章 【friend ship】
クリスは目を瞑り、どこか憶えのある清風に心をはせた。自然と密接な関係にある召喚の力を得るには、ここは申し分ない環境だ。
「ねえクリス。あれ、いいの?」
「何が?」
「あっちのボートだよ。ほら、今もこっちを見て何か言ってるよ」
ハリーに言われておざなりな視線を向けてみると、確かにドラコが何か言いながらこちらを睨んでいる。だが折角いい気持ちで夜の風を堪能していたところを邪魔されて、クリスはあっさりそれを無視してやった。
「相当好かれてるみたいだね、さっきからずっと僕らを睨んでるんだよ」
「勘違いしているようだけど、私達はもとから幼馴染で、あいつは単に家の命令を守ろうと躍起になってるだけだ」
「家の……そうか思い出したぞ、パパから聞いた事がある。たしかマルフォイって『例のあの人』側についてた一家だ」
「『例のあの人』って、確かヴォルデモートの事だよね?」
ハリーにしてみれば何気なく口に出た質問だったが、クリスとロンにとっては、ボートが大きく傾かせ、もうすぐで湖に転覆しまうほどの衝撃だった。2人とも大人さえ口にするのを恐れる人の名を、自分と同い年の少年が恐れもせずに言うとは思っていなかった。
「き、君いまな、名前を……」
「ごっごめん!まさかそんなに驚くとは思わなくて。でもヴォ…じゃなかった『例のあの人』に従ってたって一家ってことは、悪い家って事なんでしょ?ハグリッドが言ってたよ。それなのにホグワーツに入学出来るの?」
「それだよ、あいつの家は悪いなんて可愛いもんじゃない、最悪だよ。マルフォイっていえば酷いマグル嫌いの純血主義ですごく有名なんだ。しかも当時「自分達のした事は全部『例のあの人』からは脅されて従っていた」って言って罪を逃れたんだけど、そんなもんあの一家を知ってる人はだれも信じちゃいないよ」
「そうか、仕立て屋でもやたらと家の事を気にしてたのはその所為か――あれ?でも、それじゃあクリスの家って……」
“そのこと”に気づいてしまったハリーとロンは、恐る恐るクリスの顔を振り返った。明らかに困惑した4つの瞳を目の前にため息を1つ吐くと、クリスは観念して告白した。