第6章 【friend ship】
大男が烏合の衆に向かって大声で叫ぶと、それ声に導かれた1年生達が徐々に集まってきた。もちろんその中にハリーとロンもいて、クリスは再び彼らとはぐれないように慌てて近寄った。
「どこにいたんだよ、てっきりあのマルフォイとかいうヤツに連れて行かれたのかと思ったぜ」
「人ごみに流されたんだよ。でもあの大男に助けてもらった」
「あっ!あれハグリットだ。ホグワーツの森番で、僕の入学準備を手伝ってくれたんだよ」
ハリーが親しげに手を振ると、ハグリットも嬉しそうに手を振り替えした。てっきりその風貌から恐ろしい荒くれ者かとおもったが、助けてくれた事といい、ハリーの態度といい、見かけによらず良い人のようだ。
ハグリットに従い、くねくねと曲がった足場の悪い山道を抜けると大きな湖に出た。そしてその先には、思わずため息をもらすほど壮大な造りのホグワーツ城が待ち構えていた。
「ここからはボートに乗るぞ、みんな4人1組で乗り込め~!」
言われたとおり、ボートに乗り込むため最後の一人を探していると、どこからともなく闇夜でも目立つプラチナ・ブロンドが近づいてきた。
「クリス、4人1組らしいから僕らと――」
「ネサラッ!!」
ドラコに言い切ることも許さず、クリスがネサラの名前を叫ぶと、ドラコ達は一目散に逃げ出した。周りにはカラスどころかフクロウ1匹すら見当たらないのに、その名前は冷静な思考を失わせるほどトラウマらしい。
2ヶ月ほど前にカラスの大群に襲われ、ついさっきも車内で強襲されたドラコにしてみれば無理も無い。
これ以上ドラコ達に付きまとわれたくないので、3人は急いでボートに乗り込むと、タイミング良くハグリットの掛け声が響いた。
「よーし、全員のったか?出発だ!」
ハグリッドの声を合図に、静かな湖水の上を、魔法をかけられたボートが一斉に進み始めた。水面に映るほど満天の星が輝き、体を冷たい夜風が包む。クリスはローブの前をしっかりと止めた。
グレイン家の屋敷もイギリス北部に位置しているが、ホグワーツも同じく北よりに存在しているらしい。風がそう告げていると感じるのは、ホグワーツが穢れなき清涼な自然の中にあるおかげで、感覚が研ぎ澄まされている所為だろうか。