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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第1章 【深窓のご令嬢?】


 もうカラスが襲ってこない安全圏まで逃げ切れたと分かると、最初に始めたのは下らない責任の擦り合いだった。根っからの坊ちゃん・嬢ちゃん育ちのこの2人の辞書には、相手に謝るとか、自分の非を認めるといった言葉はなく、何かといえばこんな口論をしょっちゅう繰り広げている。

 それでも、こんなワガママ同士で今まで旨くやってきているのだから、大したものだろう。

「思ってなかっただって!?君の場合は考えが足りなかったの間違いだろう?!」
「ちょっと待て、全部私が悪いって言うのか!?」
「違うのかい?」
「大間違いだね!だいたい始めに、どこの誰が箒に乗りたいなんて言っ――」

 そこまで言って、クリスはやっとあることに気付いた。そう、箒だ。あのカラスの強襲に次いで無様な不時着。クリス達と同じ悲劇に巻き込まれたのだ。となると、その末路はやはり――。

 クリスは勢い良く辺りを見回した。そしてドラコの後ろに箒の姿を見つけると、それまで頭に上っていた血がサーッと下がっていくのを感じた。一方で、突然口をつぐんで固まってしまったクリスを不思議に思い、ドラコもつられるようにして自分も彼女の視線の先に目をやった。 ……そしてその光景に、同じように顔を青ざめた。

 2人の視線の先にあったのは、悲劇の末に柄が折れ曲がり、綺麗に切りそろえられていたはずの穂が長年使い古してきた箒のようにボロボロに朽ちた、超・最新式の人気モデル、ニンバス2000の無残な姿だった。

「どっ、どうしよう……」
「ぼ、僕の、僕のせいじゃないぞ。君が……」
「なに、そっちだって――…いいや、もう止めよう」
「そう、だな……それより、これからどうしようか」

 ぼろぼろになった箒を目の前に、お互い下らない口げんかを続ける気も湧かなかった。そんなことより、今の惨状をどう解決するかを考えるほうが先だ。勝手に結界の外に出て、調子に乗って遊んだ挙句、買ってもらったばかりの高級箒を壊してしまった。どう考えても、大目玉を食らうことは確実である。

「このまま森のどこかに隠すか?」
「だめだ。何か月も家のどこにもない事が知れたら怪しまれる」
「じゃあ、新しく箒を買いなおすってのはどうだい?」
「この箒って高いんだろう。請求書が家に届いたら一間の終わりだ。流石に手持ちのお金だけじゃ足りないだろうし……」
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