第5章 【最悪の訪問者】
ロンが失敗したのを知っていながら、わざわざ自分の試した魔法は全て成功した事を報告するなんて喧嘩を売っているとしか思えない。しかもご丁寧に、自分はマグル出身だが教科書は全部暗記したと自慢してくるあたり、絶対にこれはわざとやっている。
そのおかげで全てのせりふを喋り終わった後には、クリスの口元はこれでもかと言わんばかりに引きつり、その鼻っ柱をへし折ってやりたい衝動に駆られた。
「自己紹介が遅れたわね。私はハーマイオニー・グレンジャーよ、貴方達は?」
「ロン・ウィーズリーだよ」
「僕はハリー・ポッターだ」
「本当!?私、彼方に関する本は何冊か読んだわ。『近代魔法史』に『黒魔術の栄枯盛衰』、それと『二十世紀の魔法大事件』なんかにも彼方の事が出てるわよ」
またしても自分の知識を自慢するかのようなグレンジャーのセリフに、クリスは心底気分が悪くなった。
しかもよりによってクリスの目の前で、自他共に認めるハリー・ポッターオタクの目の前で中途半端な知識をひけらかすなどと愚の骨頂。今この場でハリー・ポッターの事が記載されている著書名を全て羅列してやろうかと思ったが、そんなことで張り合うのは無意味なので止めた。
「それじゃあ、そこのあなたは?」
「……クリス・グレイン」
歪む口元を必死に手で隠しながら、クリスはなんとか自分の名前を言った。少しでも気を抜いたら、冗談ではすまない言葉が出てきてしまうかもしれない。とにかく早くこのコンパートメントから出て行って欲しい。
だがクリスの願いもむなしく、ハーマイオニーは出て行くどころかさらに話しを続けた。