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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第5章 【最悪の訪問者】


「誰かカエルを見なかった?トレバーって名前のヒキガエルなんだけど」

 ノックもなしに入ってきたのは、新調のローブを誇らしげに羽織り、ふわふわの栗毛をたっぷりとたらした気の強そうな女の子だった。
 突然の挨拶もなしに現れ、しかもどこか威張ったような口調で話しかけられて、ワガママお嬢さま気質のクリスの癪に触らないはずがなかった。クリスは初っ端からこの子とは気が合わないだろうと察知した。

「さっきも男の子が来たけど、僕らは見てないよ。それにカエルも絶対ここには近づかないはずだよ、ここには天敵が1匹……いや2匹はいるみたいだし」
「……君も相当いい性格してるな、ハリー」

 からかうようなハリーのせりふは、栗毛の女の子の耳には届いていなかった。彼女の意識と視線は最早カエルではなく、振り上げられたロンの杖に集中している。

「あら、魔法をかけるの?だったら見学させてもらうわ」
「あぁ~……うん、いいよ」

 思っても見なかった申し出に一瞬うろたえたロンだが、まさかここで駄目だとはいえない。杖を構えなおすと、もう一度スキャバーズに向かって呪文を唱え直した。

「お日様、雛菊、とろけたバタ~。デブでのろまなネズミを黄色に変えよ」

 ロンの唱えた魔法は、クリスが今までで一度も見た事も聞いた事もなければ、家に貯蔵してある山のような本の中にも記されていないものだった。当然、スキャバーズにはどこも変わった様子がなく、黄色には程遠いくすんだ灰色のまますやすやとロンの手の上で眠り続けていた。

「その呪文、間違ってるんじゃないの」

 その意見にはクリスも概ね同意だったが、彼女が言うと何故か無性に腹が立った。大人しく黙っていればいいものを、招かれざる客人は少し大きな前歯をちらつかせながら自慢げに喋り始めた。

「まあ、あまり上手くいかなかったみたいね。私も練習のつもりで簡単な呪文を試してみたけど、みんな上手くいったわ。でも私の家族に魔法族は誰もいないの。だから手紙をもらった時、すごく驚いたわ。だって、ホグワーツは最高の魔法学校だって聞いているもの。もちろん教科書は全部暗記したわ。それだけで足りるといいんだけど……」
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