第5章 【最悪の訪問者】
「カエルを見つけたら直ぐに知らせるよ。もちろん、ネサラに食われる前にね」
「ひぃっ、うっ……うん。お願いね、絶対だよ」
それだけを言い残すと、ネビルはそそくさと逃げるようにコンパートメントをあとにした。その様子を見ながらまたも可笑しそうに声をひそめて笑いだしたクリスに、ロンが呆れたように呟いた。
「君、そうとう性格悪いぜ」
「そうか?私なりの友好の挨拶代わりなんだけどな。そう言う訳だからネサラ、ヒキガエルを見つけても食わずに教えろよ?ネビルに嫌われたくはない」
どこまでもあっけらかんとしているクリスに、ロンとハリーは諦めたようにため息をついた。早くもこの短い時間で、2人は「もしかしたらコイツには何を言っても無駄なんじゃないか」と感づき始めていた。
「でもよくヒキガエルなんて連れてくる気になったよな……もっとも、僕も人のこと言えないけどさ」
少しふてくされた様子で、ロンは胸のポケットから一匹の家ねずみを取り出した。丸々と太り、毛ツヤも良くないが、満腹顔でぐーぐーと眠っている姿は愛嬌があるようにも見えなくもない。
「スキャバーズって言うんだ。パーシーからのお下がりなんだけど、コイツ一日中眠ってばっかりでさ。昨日ももう少し面白くしてやろうと思って黄色に変えようとしたんだけど、ぜんぜん効かなかったし」
「スゴイ、ロンってもう魔法が使えるの?」
「そんなたいしたヤツじゃないけどね。やって見せようか?」
ハリーが感心したように声を弾ませると、ロンは少し頬を紅くしながら眠っているスキャバーズを摘み上げ、荷物からくたびれた杖を取り出した。
しかし取り出されたロンの杖は、どんな荒っぽい使い方をしたらそうなるのか教えて欲しいほど所々が欠けており、そのうえ杖芯となっているであろう、キラキラと光る動物の毛まではみ出している。
「ユニコーンの毛が出てるけど……まあいいか。じゃ、いくよ。おひ――」
今まさにロンが呪文を唱えようとした瞬間、何の前触れも無くコンパートメントの扉が開き、ロンは思わず口から出しかけた言葉を飲み込んだ。