第5章 【最悪の訪問者】
「ごめんね。あの、カエルを探してるんだけど見なかったかな?……トレバーって言うヒキガエルなんだけど」
現れたのはクリス達と同年代の男の子だった。ずんぐりとした体型で、小さい背を丸めて余計に小さくしている。扉を叩いた音からも分かるように、いかにも気弱そうな感じがする子だ。
「いや……見てないけど」
「どうしよう、いつも僕から逃げてばかりなんだ」
ついにメソメソと泣き出してしまった男の子に、3人はどうしようかと目でうかがい合った。クリスはもちろん、ハリーもロンもこういった場合に慰める言葉がすぐに出てはこないらしい。
だが入口で弱々しくしゃくりあげる男の子を見ていると、ついクリスの悪いクセが出てきてしまった。
「ヒキガエルって言ってたけど、ネサラ。お前知らないか?」
トランクの取っ手に行儀良くチョコンととまっているネサラに尋ねると、ネサラは器用に首を傾げて見せた。
「知らないか。運が良かったな少年、だけど気をつけた方が良いよ。カエルはこいつの大好物だから、見つかったら最後、気が付けば腹の中だろうね」
「えっ、ぇええ!?」
クリスがちょっと脅かしてやると、カエル探しの男の子は泣くのをピタリと止め、今度は体を震わせながら脂汗を流し始めた。情けなく顔を歪ませながらも、きょろきょろと必死に辺りを警戒する姿だけ見ると、まるで自分自身が命を狙われたヒキガエルのようだった。
あまりの挙動の可笑しさに、クリスは今度こそ顔をそらす余裕も無く笑い出してしまった。
「っく、ははははは!君は面白いな。いいね、気に入ったよ。名前は?」
「えっ!?…と、ト…トレバー」
「それはカエルだろ?そうじゃなくて、君の名前だよ」
「……ネビル。ネビル・ロングボトム」
「ネビルか、いい名前だ。私はクリス・グレイン、今後ともよろしく」
「よろしく」といわれても、直前までからかわれた相手とよろしくなんてしたくないのが普通の感覚だろう。だが気弱なネビルはつい差し出された手を握ってしまい、これで幸か不幸かクリスに気に入られた者の3人目に仲間入りしてしまった。