第5章 【最悪の訪問者】
「でも、どうして召喚師はクリス一人になっちゃったの?魔法使いみたいに、マグルから隠れて暮らしてるってことはないの?」
「最後の生き残り」ということに自分でも気づかぬうちに共感を覚えたのか、ハリーの口調は質問と言うよりも、もはや「残っていて欲しい」という願望に近かった。
「どうだろう、難しいな。召喚術の始祖という人は、どうやらエルフと魔法使いのハーフだったらしい。“生まれたときから自然界に通ずる不思議な魔力を持ち、その力により精霊と契約を交わす事が出来た”と言われているんだ。だからマグル出身者もいる魔法使いに比べて、血によってしか能力を継承されない召喚師の方が、圧倒的に数が少ない。おそらく魔法使いもマグル出身者がいなくなったら、とっくに絶滅しているだろうしね」
流石のロンもそこまでは知らなかったようで、ハリーと一緒になってコクコクと首を縦に振ってうなずいていた。2人とも初めて知る召喚術の秘密に、興味津々といった様子で次々とクリスに質問を浴びせてきた。
「ねっ、精霊ってどんな姿をしてるの?」
「さあ?そればっかりは呼び出してみないと分からないな」
「どうして?精霊ってそんなにいっぱいいるの?」
「そうじゃなくて、精霊の姿形は術者の深層心理によって変わるんだ。つまり、私が無意識にイメージしている姿をしているってこと。――水の精霊ウィンディーネ、火の精霊サラマンダー、風の精霊シルフ、地の精霊ノーム。その4体が四大精霊と呼ばれている。それと光の精霊エーテルに、闇の精霊ケイオスの二極精霊。一応その6体全ての精霊達を召喚できる事になっているけど……まだ一度も召喚した事がないから、姿どころか本当に呼び出せるかどうかも分からないんだ」
「なんでさ!?クリスは召喚師なんだろ?」
「召喚師って言ったって、一ヶ月前にやっと杖を継承したばかりなんだ。それに話によるとこの杖を使って常に精霊達と交信し絆を深め、なおかつ魔法使いとしての力もつけなければ、いくら召喚師といえど本当に精霊を召喚するのは無理なんだってさ」