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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第5章 【最悪の訪問者】


 12時過ぎ、チャンドラーの作ってくれたサンドウィッチで昼食をとり一息ついたところで、ロンが再び話しをむし返した。

「ところでさ、その杖って一体なんなの?」

 車内販売で買ったチョコバーをむさぼりながら、ロンはクリスの脇に立てかけてある召喚の杖を指差した。それまで同じく車内販売で買ったはじめての蛙チョコのカードに夢中になっていたハリーも、ロンが杖の事を聞きだすとパッと顔を上げた。

「どう見ても普通の杖じゃないよな……まさか本当に呪いの杖とか……」
「そんな物騒な物、わざわざご丁寧に持ち歩くわけないだろ」

 クリスは杖を引き寄せると、大事にきゅっと両手で杖の柄を握った。母の形見であるこの杖を継承して1ヶ月を過ぎ、その間常に杖を持ち歩くようにしていたが、杖から感じられる力は1ヶ月前と比べて特に変わった様子はない。だがそれよりもほのかな暖かさに触れることの方が、クリスには重要な事だった。

「これは亡き母様の形見、召喚の杖だ」
「召喚……って事は、ええっ!?、クリスって召喚師なの!?」
「まあそういう事だな」

 驚きの余り、チョコバーのことも忘れて口をぽかんと開けているロンに対して、ハリーはイマイチ意味が分からないように首をかしげていた。

「ねぇ、召喚の杖って?魔法の杖とは違うの?」
「そうか、ハリーはマグル育ちだったな。知らなくても無理はないか」

 ハリーとは逆に物珍しげな目で杖を眺めているロンは、間違いなくクリスと同じ生粋の魔法族出身なのだろう。にわか魔法使いでは召喚術の存在を知っていても、その希少性がどれほどのものか分かっていない者も多い。

「召喚の杖とは精霊を呼び出すための道具で、これが扱えるのは古くから伝わる召喚師の血を継ぐ者だけなんだ。……と言うより、今はもう私だけって言った方が早いな」
「どうして?召喚師の血を継ぐ――、そういえばさっき君、亡き母様って……」
「そう、先代の召喚師であった母様は、私を生んだ時に亡くなったよ。もとからあまり身体の強い人じゃなかったらしいから」
「ごめん……僕、余計な事聞いちゃったかな?」
「いや、別に構わないよ」

 しゅん、と肩を落とすハリーだが、彼も生まれて直ぐに例のあの人に両親を殺されている。親のいない寂しさは、誰よりもハリーが一番理解していた。
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