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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第37章 【終業式】


「彼がグリフィンドールの為に見せたその勇気を称え、わしはネビル・ロングボトムにも10点を与えたい」
 
 言葉にならない熱気と興奮が雄たけびとなり、大広間を通り越し、ホグワーツ全体に響き渡った。ダンブルドアが杖を一振りすると、スリザリンカラーに彩られていた大広間が赤と金のグリフィンドールカラーに変わった。これにグリフィンドールだけでなく、スリザリンを7年連続優勝の座から引き摺り下ろしたとして、ハッフルパフもレイブンクローも皆拍手喝采を送った。

 そしてグリフィンドールのテーブル席では、ある意味最大の功労者であるネビルが皆にもみくちゃにされていた。向かいに座っていたハリーとロンは肩を組んで立ち上がり、口を限界まであけて喜びの歓声を上げている。ハーマイオニーはクリスに抱きつきながら嬉し涙をながし、その髪をなでながらクリスは1人深いため息をついた。

 安心というより、クリスはなんだか気が抜けてしまった。とても現実とは思えない。200点以上離れていたのを、立った一晩の事で全て挽回してしまったのだ。

「……いや、考えてみれば『例のあの人』に立ち向かったこと事体、現実離れしているか」

 いくら必死だったとは言え、普通ならいくら命があっても足りない状況だった。もしもあと1歩ハリーが出遅れていたら、今ごろこんな風に皆で騒いでなんていられなかっただろう。歓喜の雄たけびの中で、クリスの胸にようやく「生きて帰ってきた」という実感が湧いてきた。
 クリスは魔法がかけてある天井を仰いだ。本物と同じ星空が映る大広間の天井が、組分けの日に見た時以上に美しく見える。そして夜空に浮かぶあの赤い火星も、本来の輝きを取り戻していた。これで全て終わったわけではないかもしれない、だが、今はこの平和を信じよう。
 割れるような大歓声の中、泣きじゃくるハーマイオニーにそっと話し掛けた。

「そういえば言うのが遅くなったな。ただいま、ハーマイオニー」

 しゃくりあげていたので、きっとハーマイオニーは聞いていなかっただろう。しかし、クリスはそれでもいいと思った。
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