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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第37章 【終業式】


「言ってくれるじゃないか。僕は誰かさんと比べて、よっぽど大人なつもりだけどね」
「その誰かさんて、もしかしなくても私の事か?」
「それ以外誰がいる?ちょっと前まで、召喚師になんてなりたくないって泣いてたくせに」
「泣いてなんかないぞ。それにちょっと前じゃなくて、もう1年近くも前の話じゃないか」
「――僕からすればちょっと前さ」

 そう言って、ドラコはクリスの頭の上に手を乗せ、2・3回軽く叩いた。まるで小さい子供をあやすように。

「もう『召喚師になりたくない』なんて泣き言、言わないだろうな」
「心配しなくても、もうそんなこと言わないよ……言えるわけない」

 不思議なことに、その仕草に自然とクリスの頬が緩んだ。
 精霊と心も体も一つに繋がったあの充足覚は、とても言葉では言い表せない。例え目には見えなくても、この血の中には確かに精霊が息きづいている。今はまだ心も体も成長が足りず、体にかかる負担の方が大きいが、彼らと共に在る自分が、彼らから目を背けるわけにはいかない。あの時ウィンディーネを召喚して、クリスはこれまでより強くそう感じたのだ。
ドラコはふっと微笑んでから、乗せていた手をどけると、クリスもいつもの表情に戻った。

「ところでドラコ、今度からもって来るなら本にしてくれないか?いい加減に太りそうだ」
「折角母上が送ってくださってるんだ、文句言うな。それに君はもう少し太った方がいいぞ」
「そんなこと言って、気が付いたらグラップやゴイルみたいになっていたらどうする」
「……次から本にするよ」

 何か想像してはいけないものを想像してしまったらしい、ドラコは遠い目をしてそう答えると、翌日から本当にお菓子をもってくるのをやめた。


 それからまた1週間が経ち、クリスが医務室を退院したのは終業式の日だった。しかしそれも朝からマダム・ポンフリーが最後の検診を念入りにしてくれたお陰で、やっと退室できたのは終業式が始まる直前だった。

「ほらクリス、急いで!」
「そんなこと言われても……なんだか2週間もベッドの上で生活していた所為か、体が重くて」
「君の足が遅いのはいつもの事だよ――あっ、やばいマジでもう始まっちゃう」
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