第37章 【終業式】
「そうだよ、皆助かったんだから良かったじゃないか」
素直に仲間の無事を喜び、声をそろえて笑う3人に混じって、クリスは1人乾いた笑いを浮かべていた。あの事は、生涯誰にも言わずに墓場まで持っていこう。クリスは密かにそう誓うのであった。
クリスが入院している間、よく暇を見つけてはハリー達が様子を見に来てくれた。そしてそれと同じくらい、ドラコ達も頻繁に様子を見に来てくれた。しかも来るたび来るたび、お見舞いである大量のお菓子とお小言を持って。
「全く、君はどれだけ人に心配をかけさせれば気が済むんだ」
「もうそれは何度も聞いたよ」
「君が本当に分かるまで、何度だっていってやるさ。父上も母上も、もちろん君の父上も、凄く君の事を心配してらしたんだぞ。僕だってどれほど心配してやったことか。しかもよりによってポッター達と夜中に禁じられた廊下に入るなんて……」
ぶつぶつ文句を言いながら、ドラコは持って来たお菓子の包みを開けた。クリスはそれをチャンドラーに鍛えられた耳でもって、右から左へ聞き流しながら貰ったお菓子を口に運ぶ。ドラコが見舞いに来るときはいつもこれの繰り返しだった。
時折クラップとゴイルが一緒に来て、お菓子の処理を手伝ってくれていたが、それでも見舞いの品はなかなか減らなかった。そしてドラコの嫌味も一向に減らなかったが、クリスはそればっかりは仕方が無いと諦めていた。
「それなのに奴らときたら、クリスをこんな目にあわせておいて自分達だけのうのうと授業に出ているなんて、いったいどんな神経してるんだか」
「フフッ……」
「……何がそんなに可笑しいんだい」
「いや、ドラコも少しは大人になったのかなぁ、と思ってさ」
ハリー達の文句を言う割には、今まで一度だって彼らとお見舞いのタイミングが重なった事は無い。これまでのドラコだったら、絶対に鉢合わせして喧嘩を吹っ掛けているはずなのに。
きっと今回だけは、クリスが嫌な思いをしないように彼なりに気を使っているのだろう。それがクリスは嬉かったが、その笑いが癪に障ったのかドラコはちょっと顎を上げた。