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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第37章 【終業式】


 それを思い出すだけでもクリスはゾッとした。ボロボロになったクィレルを、最後は執念だけで操っていた。その生への執着を考えると、確かにハリーの言うとおりかもしれない。

「じゃあまた賢者の石が狙われるかもしれないのか」
「それは無いよ。だって賢者の石はもう壊されちゃったから」
「そうか、それなら安心……って、壊したあ!!?あんな貴重なものを?」
「ダンブルドアとニコラス・フラメルが相談して、その方が良いだろうって事になったらしいよ」

 クリスはめまいがしてベッドに寄りかかった。それがあれば傾いたグレイン家を立て直すくらいの価値があるのに、そんな簡単に壊してしまっていいのか。それに壊されるのなら、いったい何のために4人で命を賭けたかわからない。

「そんな……どうせなら、欠片だけでもくれればいいのに。これじゃあ何の為に入院までする羽目になったのか」
「いいじゃないか、おかげで君は授業を休み放題だ」
「あまり良いとも言えないなあ。体はだるいし、暇だし――ああぁっ!」

 ロンの声を聞いた瞬間、クリスはある“大切な事”を思い出し再び叫んだ。
 誰もなんにも、本人さえもケロッとしているのですっかり忘れていたが、ロンは肋骨を折っていたはずだ。いいや、はずではなく、確かにあの時へし折ってしまった。あの手の感触は、忘れたくても忘れられるものではない。それに……

「ロン!そういえば立ったりして大丈夫なのか?肋骨が折れてるんじゃ……」
「ん?ああ、もうすっかり大丈夫だよ。マダム・ポンフリーの薬を飲んで1日も休んだら、すぐ治っちゃったよ」
「本当に?……本当に、その……いろいろと、大丈夫か?」
「だから全然平気だって。僕より君やハリーの方がよっぽど酷かったんだぜ?それに比べりゃ僕のケガなんて大した事ないさ」

 良かった、どうやらロンはあの事に気づいてないらしい。朗らかに笑うロンを尻目に、クリスは冷や汗をぬぐった。

「でも考えてみれば不思議だよな。頭を殴られたはずなのに、そっちはタンコブだけで肋骨の方が折れてるんだもん」
「チェス盤から放り投げられた時に、あばらを打ったんじゃなくて?」
「どうだろう。う~ん……まあ、いっか。特に何があったってわけじゃないし」
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