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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第36章 【痣の秘密】


「まあ今すぐにとは言わんがな。さて話を戻そう。――さよう、恐らくは君の言うとおりだろう。知っての通り、精霊は我々人間では到底叶わぬ巨大な力を持っておる。力に飢えたヴォルデモートが、それに目をつけるのはある意味当然のことだった。しかし奴自身が精霊の力を手にする事は出来なかった、それは何故か」
「精霊を使うことができるのは、召喚師の血統だけだからですね」
「その通り。では、なぜ君が『最後の召喚師』になってしまったのか。その理由を考えてみた事はあるかね」
「それは……召喚師の力は、血によってでしか継承できないから廃れていったと……」
「ふうむ、それもある。確かに君の言うとおり、召喚師の血筋は長い歴史の中で徐々に衰退し、この100余年ではある家の者以外はほとんどその力を失ってしまっていた。……そう、君の母上の家系以外は、全て……」

 クリスの身体に力が入れば、このとき間違いなく跳ね起きていただろう。父も、周りの大人たちも誰も口にしたがらなかった母の事を、ダンブルドアは知っているのだ。話の続きを渇望するクリスの眼差しを、ダンブルドアはじっと見つめた。

「当時ヴォルデモートは、自分に従う者を増やそうと世界中に暗躍しておった。それは奴の恐るべき才能じゃ。誰にも知られず人の心の隙に付け入り、従わせる方法を、奴は誰よりも理解していた。だがそれでも、召喚の力を持つ者は誰一人ヴォルデモートに従わなかった。そして結局、後顧の憂いを絶つ為にその家系の者は全て殺されてしまった。ただ一人、君の母・レイチェルを残して」
「どうして、私の母様だけ?」
「それはのうクリス、さっき言った通りじゃ。ヴォルデモートは自分の手下を増やそうとしていた。そして奴が同じく自分の元に引き入れたかった男……クラウス・グレイン。君の父上を自分の配下に加える為に、愛するレイチェルを人質に使ったんじゃよ」

 その真実を、クリスはどう受け止めていいのか分からなくて呆然としてしまった。今まで何故父が『例のあの人』についていたのか深く考えた事も無かったが、まさかこんな理由があったなんて夢にも思わなかった。いつも父が母のことを話す時悲しそうな顔をするのは、この為なのかもしれない。
 暗い室内で、クリスを見下ろすダンブルドアの瞳の色が少しだけ深い青色を湛えていた。
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