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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第36章 【痣の秘密】


 少し不安げに眉をひそめるクリスの顔を見て、ダンブルドアが優しく笑った。

「そんな顔をしなくていい、まずは君に大切なものを返しておこうと思ってのう」
「それっ……召喚の杖」
「うむ、君が眠っている間そこら辺にほうって置く訳にもいかなくてな。少しの間わしが預からせてもらったよ」

 杖を受け取ろうと、クリスは手を伸ばそうとした。しかし体が思うように動いてくれず、伸ばした手が杖に届かず布団の上に力なく落ちてしまった。
 その腕を見て、クリスは慌てふためいた。ダンブルドアが左側に立っていたから、クリスはつい左腕を伸ばしてしまったのだ。
 しかもあろう事か寝巻きの袖がめくれ、痣が僅かに覗いている。必死に隠そうとしたが、腕に力が入らない。それでもなんとか腕の痣を隠そうともだえるクリスの手を、ダンブルドアが優しく包み込んだ。まるで父・クラウスと同じように。

「そう怯えずとも良い。君のその痣のことは、わしは初めから知っておる」
「なんで……どうして……」
「クリス、君が父上からこの痣についてなんと聞かされているかわしは知らぬ。だがこの痣はそう怯えるようなものでは無い、よく見てみるといい」

 ダンブルドアがそっと手を外し、寝巻きの袖口をめくった。クリスが反射的に手を引っ込めようとしたが、驚いて思わずクリス自身それに見入ってしまった。なんとあの時に見た紋章が消え、いつもの薄っすらと黒いただの痣に戻っている。

「ほうら、ご覧。こうして見てみると、なんて事はないだろう?全ては気の持ちようじゃよ」
「でもどうして……先生。先生はどこでこの痣の事を知ったんですか?この痣について、何か知ってるんですか?教えてください」
「それは……わしの口から話してよいものかどうか考えあぐねておる。出来るなら君の父上から聞いた方が良い。わしも全てを知っているわけではないのでな」
「どうせ父は何も答えてくれません。先生の知っている限りでいいんです、お願いします」

 ダンブルドアの淡いブルーの瞳に、クリスの真剣な顔が映っている。ダンブルドアは瞬きをして、厳かにうなずいた。
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