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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第36章 【痣の秘密】


 クリスは震える手でローブの袖をつかんだ。“それ”をしたら、もう後には戻れないのは心のどこかで解っていたのに、そうせずにはいられなかった。クリスが袖をめくると、そこには痣ではなく、真っ赤に染まったドクロと蛇が絡み合った紋章が浮かんでいた。

(これは私とお前を繋ぐ印だ、だけど決して誰にも見せてはいけない。もしこの痣の事が誰かに知られてしまったら、私とお前は離れ離れになってしまう……)
「……父……様」

それを最後に、クリスは意識を失った。

* * *

 クリスは暗い闇の中を漂っていた。体を動かしたくても、まるで泥の海に浸かっているかのように重たくて動かせない。瞼も動かせないのに、クリスはそこが真っ暗で何もない所だとわかった。

(こんなところに居ちゃ駄目だ、早く皆の所に戻るんだ)
「戻るってどこに?もうお前を待っている人なんて誰も居ないのに?」

 クリスは唇さえ動かせなかったのに、まるで心を読んだかのように、もう1つの声がそれに答えた。

「お前にはもう何も残されていないんだ。家族も、友達も、お前の運命は全てそれを否定した」
(それでも、約束したんだ。必ず生きて帰るって……)

 ほら、声が聞こえる。皆が私の名前を呼ぶ声が聞こえる――暗闇の中にやわらかな声が降り注いだか思うと、クリスの視界は一瞬にして光に満ち溢れた。


「クリス!!」

 目を開けると、ハリーとロンとハーマイオニーが上から覗き込んでいた。クリスは何か言おうと口をあけたが、声が出てこなかった。というより体がだる過ぎて、瞼を開けているのがやっとだった。

「よかった……やっと目が覚めたのね!」

 ハーマイオニーが泣きながらクリスに抱きついてきた。正直重いし苦しいので退いてほしかったが、口から出るのは意味のない言葉の切れ端ばかりだった。それでも、ハリーとロンは気付いてくれた。

「ほらハーマイオニー、クリスが苦しがってるからそこら辺にしとけよ」
「でも、でもっ……」
「大丈夫だって、クリスはどこにも逃げやしないから」

 2人になだめられて、ハーマイオニーはやっと離れてくれた。ほうっと深く息をすると、クリスは少しだけ身体が楽になったような気がした。まだ起き上がれないが、声くらいは出せる。
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