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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第36章 【痣の秘密】


 たった1つハッキリしている事、それはハリーを助けて2人でロンとハーマイオニーの所に帰るという事だ。クリスの声に呼応し、召喚の杖が青い光を放つ。そしてウィンディーネの作り出した水の柱が、クィレルの体もろとも『例のあの人』を壁に叩きつけた。
 その衝撃は、骨がきしむ音が聞こえてくるような程だった。水圧で押しつぶされたクィレルの体がぐにゃりと曲がり、潰された悲鳴がかすかに唇から漏れた。恐らくどこか内臓が潰れたのだろう。口から血を流し、ぐったりしている。自分で命令しておきながら、クリスはその力の巨大さに戦慄した。
 しかし体に憑依しているヴォルデモートは、痛みを感じるどころか逆に嬉しそうに笑った。

「くくく……はーっはっはっは!素晴らしい、素晴らしいぞ!これが精霊の、自然界の王の力か!欲しい――その力、ますます手に入れたくなったぞ!」
「効いて、ない?」
「そんなまさか……」

 効いていないはずはない。クィレルの体はもうボロボロで、立ち上がることも不可能な状態だった。本人も意識がないのか、うつろな目をトロンと開いているだけだ。しかしヴォルデモートの意思によって、クィレルは立ち上がった。

「行け、クィレル!召喚師もろとも石を手に入れろ!」
「危ないクリス!!」

 寸前のところでハリーが前に立ちふさがり、身代わりになった。すると不思議な事に、クィレルがハリーに触れたとたんクリスの痣がまた焼けるように疼いた。それだけではない、同時にハリーの額のキズが痛み出し、ハリーに触れたクィレルの手も一層焼け爛れ、皮がむけ、クィレルはまるで獣のような悲鳴をあげ倒れた。
 その隙に、クリスは痛みに耐えながらハリーに駆け寄った。

「大丈夫か、ハリー?」
「なんとかね。クリスは、ケガはない?」
「私なら大丈夫だ。……クィレルは、どうなってるんだ?」
「分からない、僕に触れるとああなるんだ――とにかく今の内に逃げよう」

 ハリーを助け起こし、2人で扉に向かおうとクィレルに背を向けた時だった。あの不気味なヴォルデモートの怒り狂った声が、背中越しに聞こえてきた。そして信じられない事に、頭の顔が蛇のようにうごめいたかと思うと、操り人形のようにクィレルを立ち上がらせた。

「逃がさんぞ貴様ら、今ここで始末してくれる!!」
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