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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第35章 【水の精霊ウィンディーネ】


「死ぬなよ、ロン。頼むから死なないでくれ!」

 3度目の人工呼吸をした後だった。ロンが軽く咳き込み、ゆっくり目を開けた。

「ロン!よかった気が付いた!!」
「僕……どうして……そうだっ!チェスは、ゲームはどうなった?」
「ロンのおかげで、チェスには勝てた。だけど……」

 クリスは扉のほうを振り返った。明らかに魔法をかけられた紫色の炎が、未だ扉を包み込んでいる。ハリーとハーマイオニーがどうなってしまったかは分からないが、あれを突破して追いかけるのはどう考えても不可能だろう。今は2人に懸けるしかない。

「……まさか、あの扉の向こうに?」

 戸惑うクリスが答える前に、ロンは立ち上がろうと上体を起こした。しかし胸をおさえ、またすぐ倒れてしまった。

「無理するな!肋骨が折れてるんだぞ」
「だけど……このままここで寝てるわけには行かないんだ」
「だからってそんな体で行ってどうする。それにあの炎を見ろ、あんな物無理やり潜り抜けようとしたら、それこそどうなるか分からないぞ!」

 クリスとしては肋骨を折ってしまった手前、どうしてもロンを行かせたくなかった。それに短い時間だったとはいえ、ロンは呼吸まで止っていたのだ。これ以上無理はさせたくない。

「ロンはここで待っていてくれ、今私が助けを呼んでくる」
「呼んでくるって……どうやってあの穴を登るつもりだよ。ハシゴもロープもないんだぞ」
「空飛ぶ鍵の部屋に、ハリーが使った箒があっただろう。あれで戻る」
「君には無理だ、今まで30cmだって空を飛んだ事あるか?それなら僕が行くよ」

 無理やり起き上がろうとするロンを、クリスは肩をつかんで押さえつけた。

「だからっ、今のロンには無理だ!とにかく私がどうにか助けを――ハーマイオニー!?」

 クリスは我が目を疑った。なんとあの炎を潜り抜け、ハーマイオニーが戻ってきたのだ。しかも不思議なことに、ハーマイオニーはヤケド1つ負っていない。

「クリス、それにロン!良かった、2人とも無事ね」
「ハーマイオニーこそ大丈夫なのか?いったいあそこで何があったんだ、ハリーはどうした!?」
「落ち着いて、今説明するわ」
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