第4章 【ハリー・ポッター】
「なっ?いっ!もう一回いってくれ、今なんて言った!?」
耳を疑いたくなるような名前が飛び出し、クリスは身を乗り出して声を荒げた。その迫力の気圧され、眼鏡の少年は身をすくめながら小さく答えた。
「えっ、だからホグワーツは初めて――」
「違う!名前だ!今、確かハリー・ポッターって……」
「あぁ……うん、僕ハリー・ポッターって言うんだ」
ほら、とクシャクシャの前髪をかき上げると、確かにそこには確かに稲妻形の傷跡がついていた。それを見たロンは驚きと感動のため息をもらし、逆にクリスは絶望と落胆でガックリと肩を下ろした。
「えーっと……君、大丈夫?」
「えっ?あぁ、うん大丈夫だ、ただ私の想像していたイメージとは違うなって思っただけだから……」
誰かウソだといって欲しい。夢に見るほど憧れていた人が、辛い時や悲しい時はいつもその名を呼んで元気を分けてもらっていた英雄が、まさかこんな痩せて、いかにもひ弱そうな冴えない男の子だったなんて……。
はたから見ても分かるほど絶望に打ちひしがれているクリスに、何だか申し訳なさそうに苦笑いを浮かべているハリーを見て、ロンが慌ててフォローをいれた。
「魔法界の子供達は皆ハリー・ポッターの名前を聞いて育ってるから、君にもの凄い憧れを持っている人だって大勢いるんだ。僕の妹も駅で君を見た後キャーキャー騒いで凄かったん……」
「おーい、ロン!」
馴れ馴れしくロンの名前を呼んだ同時に突然コンパートメントが開かれると、ロンと同じく真っ赤な髪をした2人組みの少年が現れた。年はロンよりもいくらか上に見え、2人ともそばかすの数まで同じではないかと思えるほど瓜2つの顔立ちをしている。
「あれっ、いつの間にやら一人増えてるな」
「ああ……えっと、#NAME1だよ。クリス・グレイン。今さっき知り合ったんだ」
「なるほど。ああ、俺の名前はフレッドで、こっちが双子のジョージ。俺らはロンの兄貴だ」
ご丁寧に紹介してもらったのはいいが、クリスにはこの先何年たってもこの双子の見分けなんてつくとは思えなかった。それほど、この2人は似ている。
「俺達は前の方のコンパートメントに行ってるぞ。リーがでかいタランチュラを持ってきたってよ。それじゃあクリスにハリー、我らが可愛い弟・ロニーちゃんをよろしく」