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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第34章 【7つの関門を突破せよ】


 大きな部屋に、大理石のチェス盤が設置されていた。その大きさは、駒だけ見ても普通の大人と同じくらいだ。それが白と黒、それぞれ16個ずつの計32個も配置されているのだから、子供の視点から見れば圧倒を通り越した重圧感がある。
 なるべくなら係わり合いたくない4人は、彼らをやり過ごそうとこっそり盤の隅っこを通って抜けようとした。だが目にも止まらぬ早さでポーンが動き出し、サーベルを抜いてその行く手を遮った。
石でできた無表情な顔が、冷たく4人を見下ろしている。

「えーっと、つまり……僕らにチェスをやれってこと?」

 ポーンが無言でうなずき、元の位置に下がった。つまりこの巨大チェスに勝たなければ、先に進ませてもらえないらしい。そればかりか、ロンが何気なくナイトに手を触れた瞬間、駒に命が吹き込まれ、馬から下りてロンに乗るよう促した。どうやら自分達が駒の代わりをして、ゲームをしろと言っているようだ。時間が惜しいクリス達にとって、これほど厄介な仕掛けもないだろう。
 しかし負けた時は、何度でもやり直させてもらえるのだろうか。そう考えた時、クリスは例のダンブルドアのセリフを思い出した。

    『――とても痛い死に方をしたくなければ――』

 フラッフィー、悪魔の罠、トロールときて、今さら死なない保障なんてどこにもない。自分達が駒として動く以上、最悪死も覚悟しなければならないのだ。64マスの戦場で繰り広げられる知略の戦争、それがチェスであり、そして“取られた”駒は“使えない”それがルールだ。
 しかしそれ以上に、クリスにはある懸念があった。

「――こういう場合一人で進めた方が良いのか、それとも……いや、そもそも時間が……」

 緊張が張り詰め、躊躇するクリス達の中で、ロンが一人腕組みをして唸っていた。彼は果敢にもこのゲームに挑むつもりらしい。眉間にシワを寄せ、いつになく真剣な表情で考え込んでいる。

「ハリー、君はどう思う。みんなで知恵を出し合って考えながら進めたほうがいいと思うかい?それとも誰か一人に任せるか」
「僕には無理だよ。ホグワーツに来て初めてルール覚えたくらいだから」
「ハーマイオニーは、自信ある?」
「パパとすこしならやったことあるわ」
「それじゃマズイな。クリスは?」
「そもそもチェスなんて下らないもの“大っ嫌い”だ!」
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