第34章 【7つの関門を突破せよ】
しかめっ面でそう言うと、ロンが吹きだした。こんな状況で、何が可笑しいんだろう。
突然の事に怪訝な表情のクリスの顔を見ながら、ロンはにやける口元を押さえもせず、悪戯好きの子供みたいな笑みを浮かべている。
「なるほど“大っ嫌い”ね。僕もやっとクリスの言いたい事が分かってきたよ」
「んなっ!ちっ、違うぞ!」
顔を真っ赤にして言い返すクリスだったが、まさしくロンの言うとおりだった。数年前よりによってドラコにまさかの10連敗を喫してから、クリスはチェス盤に触ってもいない。
そう、クリスの懸念とはこれだった。チェスなんて普通にやっても勝てるイメージすら湧いてこないのに、命を賭けたゲームなんて、むざむざ殺されに行くようなものだ。
しかし自分には才能が無いと認めるのは、クリスのプライドが許さなかった。
「勘違いするなよ。私はただこんな駒を取り合うだけのゲームなんて、下らないからやらなかっただけだ」
「どこかで聞いた事あるなあ、そのセリフ。確か初めての飛行訓練の前日だったかな?」
「うるさいぞハリー、ハーマイオニーも笑うな!」
「笑ってないわ、貴女らしいと思ってるだけよ」
クスクス笑いをこぼすハーマイオニーに、クリスは耳まで真っ赤にして怒った。しかし言い返せば言い返すほど、ドツボにはまっていっている。それを見てロンは笑いながら肩をすくめた。
「はいはい分かったよ、クィディッチも嫌いだからやらないんだろう。飛べないからじゃなくて」
「そう、その通りだ」
「ホントいい性格してるよ、君って奴は。……お陰で緊張がほぐれたよ」
険しい顔つきから、いつものロンの顔に戻っている。ロンはローブを翻し盤上の中心に立つと、立ち並ぶ屈強の戦士に護られた王を、そしてさらにその奥に護られた扉を指差した。
「それじゃあ僕が、皆をあの扉の向こうまで連れて行ってやるよ――さあ、勝負だ!!」