第34章 【7つの関門を突破せよ】
寸前のところで身をかがめ回避すると、ハリーはその姿勢のままかなりのスピードを出して鍵の群れから逃げるように空中を滑走していた。しかし相手も追いつきはしないものの、しっかりとそのスピードについていっている。
暫く互角の空中戦を見つめていたクリス達だったが、スネイプの事やハリーの体力を考えると、長期戦は不味い事に気づいた。
「くそっ、僕達に出来る事ってないのかよ!」
「無理よ。箒は1本しかないのよ、ここはハリーを信じるしかないわ」
焦るロンの隣りで、ハーマイオニーは指を十字に組み必死に祈っていたっていたが、クリスには見ているだけなんて我慢できなかった。何か必ず手があるはずだ。何でもいい、ハリーの助けになるような物はないのか。
必死に辺りを見回すと、羽根の生えた鍵が落ちているのが目にとまった。多分ハリーとの空中戦の最中に、勢い余って壁に激突したんだろう。よく見ると羽根が折れて飛べなくなった鍵がいくつか壁際に倒れていたが、それらのどれもが、クリス達の求める鍵ではなかった。
「これじゃない……これも違う。ああっ、こんなややこしい魔法をかけたの誰だよ!」
「多分飛行術のフーチ先生じゃないのか?」
「違うわ、フーチ先生は賢者の石に携わってないってハグリッドが言ってたじゃない。多分これはフリットウィック先生が鍵に魔法をかけて飛べるようにしたのよ」
フラッフィーや悪魔の罠のように生死に係わる関門ではないが、これはこれで地味に面倒くさい。多分クリス一人だったら、一生かかっても突破できないだろう。なにせ飛行術だけはネビルにも劣るほどの成績だ。
「待てよ……飛行術……そうだっ!」
その時、クリスの脳裏に閃きが走った。クリスはすぐさま室内を飛び回っているハリーに向かって叫んだ。
「ハリー、あれをやるんだ!飛行術の授業中、ネビルの思い出し玉を取り返したときに見せたあれを!こいつらはスピードの所為で急には止れないんだ!」
「わかった!危ないから3人とも離れてて!」
ハリーは一旦天井スレスレまで飛び上がると、そこから地面目がけて一気に急降下した。ネビルの思い出し玉を取り返したときと同じように、ほとんど床と垂直になって突っ込んでゆく。だがスピードは今日の方が上だった。このままじゃ本当に床に激突してしまう。