第32章 【禁じられた森で見たもの】
「クリス!君、本当に大丈夫なのか?どこか具合が悪いんじゃ……」
「いいや大丈夫、大丈夫だから。少し疲れただけだ」
「少し疲れたって顔色じゃないぞ。ちょっとここで待ってろ、今助けを呼んで来る」
「いらないッ、行かなくていい!!ここに居て!」
クリスはとっさにドラコの手を掴んだ。
父はずっと嘘をついていたんだ。この痣は自分たちを繋ぐ印なんかではなく、『例のあの人』に繋がっていたのだ。そして組分け帽子の言う“自分の中に眠るもう1つの力”とはスリザリンの血統ではなく、この痣のことを示しているのだとしたら……。
この事が知られたら、ハリーもロンもハーマイオニーも、そしてドラコも、いつか自分の元を離れて行ってしまう。クリスはそれが一番恐ろしかった。
「ドラコ、前に私に言ったよな。私の一番の親友は自分だって」
「あ……ああ、言ったさ」
「それじゃあ、私に何があっても――私が何者でも、離れていかないって誓ってくれるか?ドラコ」
クリスはドラコの手をきつく、きつく握り締めた。その震えるクリスの手を、ドラコは一握ったままそっと自分の胸元に当てた。
「………誓うさ。何があっても、僕だけは君の味方だ。当たり前だろう」
「ありがとう……ありがとう、ドラコ」
しかしこの時のクリスはまだ知らなかった。
これから数年後、かけがえのないこの手を、自分から離していってしまう事を……。