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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第32章 【禁じられた森で見たもの】


 クリス達に気付いた「影のようなもの」が、ローブの口元から銀色の血を滴らせながら1歩1歩こちらに近づいてきた。ドラコがクリスを立たせようと必死に腕を引っ張るが、クリスは完全に腰が抜けて足に力が入らなかった。そしてクリスの目の前に立つハリーも、まるで根がはってしまったかのように微動だにしない。
 不気味な青白い腕が、ハリーに触れようと手を伸ばしてきた。その瞬間、ハリーが額の傷を押さえながら尋常ではない叫び声を上げ、その場にのた打ち回った。それと同時に、歓迎会の時以上にクリスの左腕の痣が熱をもって疼きだした。しかも今回はそれだけではない。これまでに感じた事のない禍々しい黒い感情が湧き上がり、体中を蹂躙している。
耐えられず気を失う最中、クリスはどこからともなく駆けてくる蹄の音を聞いた。


 それほど長い間ではなかったが、クリスが気を失っていた間に何かあったのだろう。気が付くとあの「影のようなもの」の姿はどこにもなかった。その代わり見知らぬ男がハリーとドラコに交じってクリスを見下ろしていた。

「クリス……クリス!良かった、気が付いたんだね」

 未だに朦朧とする意識の中で、クリスは何よりも先に左手を体の下に隠した。もう痣は疼いていなかったが、用心に越した事はない。

「どこか痛いところはない、クリス?立てる?手をかし――」
「触るな!――……ほら、クリス。立てるかい?」

 クリスに差し伸べたハリーの手を、ドラコが弾き落とした。クリスは返事をする代わりに2・3度うなずくと、ドラコの助けを借りて立ち上がった。もちろん左手は隠しながら。

「ケガはありませんね、良かった。君は……そうか、召喚師の……エルフの血を引いているのか」
「どうして、それを?」
「エルフには及ばないが、僕らケンタウロスも多少マナの流れを読むことは出来ます。君は……そう、他の人間とは少しマナの流れが違うようだから」

 見知らぬ男だと思っていたのは、ケンタウロスだった。明るい金髪に、驚くほど綺麗な青い目をしている。

「この森は今とても危険だ。特にポッターの名を持つ少年、君にとってはね。早く君だけでもこの森を出たほうがいい。私の背に乗ってくれたまえ、ハグリッドの元へ連れて行こう」
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