第32章 【禁じられた森で見たもの】
打ち上げられた赤い光を見て、急いで駆けつけてくれたんだろう。ハグリッドが矢をつがえた石弓をかまえ、茂みを飛び越えて現れた。そして泣きじゃくるネビルと腹を抱えて笑うドラコ、それを睨みつけるクリスをみて全てを悟った。
「お前ぇ達!これは遊びじゃねえんだぞ!!もういいっ、メンバーの交代だ!!」
ハグリッドが怒鳴るのも無理なかった。ここでは一瞬でも気を抜けば、フィルチの言うとおりになってしまう。
一旦ハリーとハーマイオニーと合流したのち、メンバーの組み直しが行われた。クリスは監視の意味も含め引き続きドラコと、そして新たにハリーと組み、ネビル・ハーマイオニー・ハグリッドがチームとなって、再びユニコーンの捜索が始まった。
ドラコは同じチームにハリーがいることに初めは散々文句をいっていたが、森の奥へ進むに連れだんだん口数が少なくなり、30分も経つ頃には森の不気味な空気に圧され、全く喋らなくなった。
みるみるうちに霧が濃くなり、風の音も虫の声も、ふくろうの鳴き声も聞こえない。不気味な静寂の中、クリス達が木立を掻き分ける音だけが辺りに響く。月明かりに照らされ、滴った銀色の血が頻繁に見つかるようになり、それがより一層不気味な雰囲気をかもし出していた。
「2人とも待った……見て、あれ」
どれくらい進んだだろうか、突然先頭を歩いていたハリーが手を上げて、クリス達を静止させた。樹齢何千年という大きく古い樫の木の根元に、純白のユニコーンが横たわっていた。否、死んでいた。きっとここで苦しみの末に息絶えたのだろう、銀色の血が辺り一面に飛び散らばっている。
「……折角僕らが探しに来たのに、こんな結末か」
「早くハグリッドに知らせよう」
ハリーが杖を掲げた、その時だった。ズル…ズル…と、地面を這いずるような音が聞こえ、3人はその場に凍りついた。ユニコーンの屍骸を挟んだ反対側から、なにか得体の知れない影のようなものが、黒いローブに包まった体を不気味に引きずりながら近づいてくる。そしてゆっくりユニコーンに近づくと、その銀色に輝く血を啜りはじめた。
「うわあああああぁぁぁぁ!!!!」
ドラコが絶叫すると、クリスの腕を掴んでその場から逃げ出そうとした。しかしクリスは恐怖で足がもつれて転んでしまい、その脇をファングが勢いよく通り過ぎた。