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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第32章 【禁じられた森で見たもの】


(さあ、教えてくれ。あなた達が知っている事を全て)
(…ユニコーン…の血は……死の淵を…彷徨う…たまし…いを…助ける……しかし…それを口に…と…得られるものは……呪われし……死の生)
(“ユニコーンの血は、呪いと引き換えに瀕死の者を助ける”――かな?それじゃあ誰が、何の為にユニコーンの血なんて欲しがるんだ?)

 さっきよりは大分マシになったとはいえ、まだ分からない事も残っている。息をするのも忘れるくらい杖を強く握り締め精霊に強く語りかけるクリスに、今度はネビルが話し掛けてきた。

「ね……ねえねえ、クリス…」
「悪いが後にしてくれ」
「マルフォイが、どっか行っちゃったみたいなんだけど……」
「トイレだろ」

 この時、もう少しネビルの疑問に耳を傾けていれば、あの惨事は起らなかったかもしれない。しかしこの時のクリスにそんな余裕はなかった。精霊の声を聞くために集中するので精一杯だった。

(…ユニコ…ンの血を…求…しは…厄災の紅…星を背…う者なり……その…名は――)
「うぎゃああああぁぁぁぁ!!!!」

 闇夜を引き裂くネビルの悲鳴に、クリスは意識を現実へと引き戻した。危険をかえりみず明かりを消せと命じたのは自分だ。その所為でネビルにもしものことがあったら――クリスは素早く懐から杖を取り出し、ネビルと同時に赤い光を打ち上げた。しかしその2つの光に照らし出されたものは、危険な怪物ではなく、腹を抱えて茂みから現れたドラコだった。

「ハハハハハ!まさかこんな単純な手に引っかかるなんてな!普通トロールだって騙されないぞ」
「ドラコッ!自分が何をしたのか分かってるのか!?あれほど邪魔するなって言っただろう!!」
「退屈だったから、少しからかってやろうと思っただけさ。まさか――ハハッ、あんなに驚くなんて」
「笑い事じゃない!!人の苦労を何だと思ってるんだ」

 怒りを込めたコブシをギュッと握った。今まで苦労して、一番肝心なところで結局このザマだ。もう一度精霊と交信を試みたくても、召喚の杖の光はすでに消え失せ、クリスに語りかけようとした精霊の気配もどこかに消えてしまっていた。

「あと少しでユニコーンを襲った犯人が分かったのに、お前はなんて事を――」
「3人とも無事か!?いってぇ何があった!?」
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