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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第32章 【禁じられた森で見たもの】


 そして思ったとおり、森の奥へと進んでみると、森の気が濃くなっていくような気がした。少し開けた場所に着くと、クリスは丁度いいと思い足を止めた。

「少し休憩しようか、慣れない森を歩くのは疲れるだろう。だけど、頼むから静かにしてくれよ。私にはやりたい事があるんだ」

 クリスは魔法の杖をローブにしまうと、召喚の杖を両手でぎゅっと握りしめ目を瞑った。やはりここはホグワーツのどこよりも自然の力が強く働いているのだろう。体を覆う空気が、他とは全く違う。
 クリスは深呼吸をして肩の力を抜くと、杖に向かって強く語りかけた。

(教えて欲しい……あなた達は、私に何を伝えようとしているんだ……)
(……が……ユ…コ…ン……危………)

 クリスは思わず目を見開いた。微かとはいえ、精霊の声を聞いたのは初めてだ。いくらこの森の気が強いからといって、本来なら力の弱い素精霊が反応を返してくるなんて有り得ない。やはり今森では異常事態が起こっていて、精霊はそれを必死で伝えようとしているのだ。
 その証拠に、三頭犬の部屋に入った時ほどではないが、幽かに召喚の杖の先にある石の部分が、ぼんやり白く光っていた。これならいける!クリスがより一層精霊の声に耳を傾けようとした時、何を思ったのかドラコが沈黙を破った。

「クリス、君は休まなくていいのかい?」
「今私に話し掛けるな」

 あと少しで、ユニコーンを襲った者の正体が分かるかもしれないのだ。このチャンスを逃す訳には行かない。クリスは深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、神経を極限まで尖らせた。

(答えてくれ、この森で、今何が起っているんだ?)
(……に…ニコーン…襲…た……血が……魔力……呪われ……)
(何に襲われたんだ。そのユニコーンは、今どこにいる?)
(…危…い……闇……命……呪われた……ユニコ…ン…の血……)

 あと一歩だというのに、いまいち内容が分からない。焦りと苛立ちが入り混じる中、クリスは閉ざした瞼を刺激する杖の灯りが気になり、ドラコとネビルに明かりを消すよう命じた。
 一瞬の間の後、フッと2つの明かりが消える気配がした。これでもう邪魔する物はない。木が生い茂る森の奥までは月の明かりも満足に届かない。辺りを照らすのは、クリスの手の中でわずかに光る召喚の杖だけとなった。
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