第32章 【禁じられた森で見たもの】
「ねえ、クリス……」
「なんだ?」
「その……あの……頭のケガ、もう大丈夫?」
ネビルは例のクィディッチの試合の事を言っているんだろう。そういえば、ハリーが一度「ネビルが気にしていた」と言っていた事を思い出した。クリスは振り向かず、歩きながら答えた。
「ああ、もう大丈夫だよ。キズもすっかり塞がったし、多分痕も残ってないよ」
「本当!?本当に、キズ残ってない?」
「まあ残っていたとしても、髪の毛で隠れて分からないよ」
「もし……もしキズが残るようだったら…………ぼ、ぼく、ちゃんと“責任取る”から!」
「何だとおおおぉぉぉっ!!!」
先に声を上げたのは、クリスではなくドラコだった。先に驚かれてしまい、クリスは驚くタイミングを逸してしまった。
「ドラコ、あんまり大声だすなよ。相手に気づかれたらどうするんだ」
「どうして君はそんなに落ち着いていられるんだ!こいつ……つまり、君とけっ……結こ――ハッ!そうか、さてはお前わざとだな。これが目的であの時わざとクリスを突き飛ばしたんだな」
「僕そんなしないよ!でもおばあちゃんが、女の子にケガをさせちゃいけないって。キズが残ったらちゃんと責任をとらなきゃいけないって言ってたから」
「お前の祖母の言う事など知ったことか!クリスは僕の許婚なんだぞ、それを横から掻っ攫おうなんて100万年早い」
「……どうでもいいから、早く行かないか。私たちはそんな事を言い合うために、この森に入ったんじゃないだろう」
いつもならこういうのはハーマイオニー辺りのセリフで、クリスはいつも言われる側のはずだ。言う側になって、初めてクリスはその苦労を知った。これが終わったら、ハーマイオニーにいつもスマンと謝っておこう。
「はあ……――ネビル」
「なっ、なに?」
「私は責任なんて取ってもらおうと思ってないから、もう気にしなくていいよ」
「ほんとうに?」
「ああ、本当だよ」
クリスとしては、今はそんな事よりも今は精霊とユニコーンを探す事の方が大切だった。やっと2人が言い争いを止めると、クリスはハーマイオニーの顔を思い出し、もう一つため息を吐いてから歩き出した。