• テキストサイズ

ハリー・ポッターと小さな召喚士

第32章 【禁じられた森で見たもの】


 禁じられた森に入って10分ほど歩いた頃、クリスはあることに気づいて足を止めた。

「どうしたんだい、クリス?」
「……誰かが呼んでいるような気がする」
「ええっ!それってもしかして幽霊とか!?」
「それは違うと思う、私の杖が――召喚の杖が反応している」

 三頭犬の部屋に入った時のように光を放っていたわけではないが、握った杖の感触から、クリスはいつもと違う熱を感じていた。それだけではない。森に足を踏み入れたときから、何者かがクリスの第六感に語りかけようとしている。そしてそれは森の奥に進めば進むほど、強くなってきていた。

「この森は殆んど人が立ち入らないようだし……もしかしたら“素精霊”が多いのかもしれない」

“素精霊”とは、文字通り精霊の素みたいなものだ。自然のあるところならどこにでもいて、数は多いが力も弱く、姿も持たない。いうなれば自然界の気やオーラのようなものである。しかしそれらが何か特別な意志をもって人間に語りかけてくる事は、まず無い。

「悪いが、2人とも少し静かにしていてもらえるか?」

 唇に指を当て2人を黙らせると、クリスは目を閉じ、耳を澄ませた。しかし聞こえてくるのは風の音や葉っぱが擦れる音、ふくろうの鳴声ばかりで、素精霊の声なんて聞こえてこない。でも確かに、何かがクリスを呼んでいる気がする。

「仕方ない、もっと奥に進んでみよう。人の立ち入らない森の奥の方が、素精霊の数も多い」
「本気かいクリス?どうせあの木偶の坊もいないんだし、ここら辺で引き返そう」
「そうだよ。それにあんまり奥に行くと帰ってこられなくなるよ?」
「自然の声に耳を傾けるのも召喚師の仕事だ。行きたくないなら2人で戻ってくれ、行くぞファング」

 クリスの中から、いつの間にか怖いと言う気持ちはどこかにいってしまっている。あるのは精霊が自分に何を伝えようとしているのか、またユニコーンを襲ったのは何者なのかという疑問だけだ。
 クリスが本当に2人を置いて先に進むと、ドラコとネビルは慌てて後ろについてきた。ファングの鼻を頼りに、3人は黙って暗い森の中を歩く。足下を照らすのは杖の灯りと、時折気の隙間から注す月明かりだけだ。辺りを警戒し、耳をそばだてながら歩くクリスに、後からネビルが声をかけた。
/ 375ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp