第31章 【to be or not to be】
寮杯のためか、「例のあの人」を倒された恨みかは知らないが、スネイプのハリーいびりは、最早病気の粋に達している。ついさっきの呪文学の授業でもクリスがフリットウィック先生の質問に答えられた褒美として5点加点した分、『ポッターの乳鉢の持ち方がなっていない』として5点を減点したばかりだ。
「なあハリー。もしかして何かいらない事して、あいつを怒らせたんじゃないのか?」
「そんな事してないよ。多分このあいだの“マルフォイをはめた”ってマクゴナガル先生の言う事を信じてるんだろう」
「それじゃあ私やハーマイオニーへの態度が変わらないのはおかしいだろう」
「じゃあよっぽど僕の顔が気に入らないか、前世からの因縁でもあるんじゃないの」
ハリーは適当に言ったつもりだったが、それは当たらずしも遠からずだった。
* * *
試験を1週間後に控えた日の朝、学校のふくろうがクリス達に手紙を持って来た。
今夜、罰則を行います。PM11:00に、玄関広間に集合しなさい。 【マクゴナガル教授】
200点もの減点騒ぎのせいで、罰則の事なんてすっかり忘れていた。それにしても夜の11時に玄関広間に集まれなんて、いったい何をさせるつもりなんだろう。その疑問はハリーもハーマイオニーも感じていたが、文句は一切口にしなかった。理由はどうにせよ、それだけの事を自分達はしてしまったのだ。
午後11時10分前、200点もの減点をしでかしたクリス達は知らせのあった通り玄関広間に集まった。しかしそこにマクゴナガル先生の姿は無く、代わりにフィルチが意地の悪い笑顔で立っていた。そしてそこに、ドラコもいた。
ドラコとクリスは顔を見合わせたが、言葉は何も出てこなかった。しかしクリスが不安に思っているのと同じくらい、ドラコもこれからどうなるのか不安を感じているのが彼の目を見て分かった。そしてドラコも言葉に出せないクリスの不安を感じ取っていた。
「全員、逃げずに来たようだな。……だが、初めに言っておいてやる。逃げるなら、今のうちだぞ。後で逃げようと思ったって……そうはいかないからな」