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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第31章 【to be or not to be】


 5人の前を忙しく往復していたマクゴナガル先生が、突然足を止めて皆の方に向き直った。目を瞑り、手を固く組み、真一文字に結ばれた唇は、まるでこれから言う言葉を憎んでいるかのようにプルプル震えている。

「50点です」

 何の脈絡もなく発せられた言葉に、みんなの思考が一瞬停止した。

「一人につき50点減点します。もちろんあなた方もですよ、マルフォイ、ロングボトム。誰であろうと、どんな理由があろうとも、生徒が夜中に学校を歩き回る権利は一切ありません。」
「そんな……待って下さい、先生!」
「いいえグレンジャー、待ちません。待ったところであなた方が寮を抜け出したことに変わりはありませんから」
「でも一人50点なんて……」
「往生際が悪いですよ、ミスター・ポッター。何を言おうと私の意思は変わりません。減点と、さらに罰則も受けてもらいます。そうすれば、己がどれほど重い罪を犯したのか思い知るでしょう――まったく、夜中に集団で抜け出すなんて。それでなくとも、最近は……」

 最後のは少し口が滑ったのか、マクゴナガル先生は咳払いをして仕切りなおした。だがそんな事をしなくても、だれも気にしていなかった。皆の頭の中は50点の減点――グリフィンドールは200点もの大減点に、頭が真っ白になっていた。

「罰則については、後日詳しくお知らせします。今夜は精々、自分のしでかした事を反省しなさい」

 全員暗い表情でマクゴナガル先生の研究室を後にした。誰も何も話す気になれない。互いに聞きたい事があったはずのクリスとドラコも、廊下で別れる時に顔を見合わせたきり、何も言わずにそれぞれの寮に帰った。
 ほとんど口も開かず蚊の鳴くような声で合言葉を告げ、クリスは談話室のソファーに倒れるように座り込んだ。50点、いや、4人合わせて200点も得点を失ってしまった。特に寮杯なんて気にした事も無かったし、最下位でも別にいいと思っていたクリスでも、流石にこれは堪えた。
 200点……たった一晩の過ちで、200点だ……200点……。

「……ふ、ふふふふ………」
「クリス?」
「…ふふふ、ははは……はぁーーっはっはっはっは!!!」

 灯りもつけていない真っ暗な談話室に、クリスの狂ったような笑い声が響いた。
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