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ハリー・ポッターと小さな召喚士

第31章 【to be or not to be】


 マクゴナガル先生の研究室に集められた5人は、みんな揃って自分の靴を眺める事以外は何も出来なかった。言い訳をすることも、顔を上げることすらままならない。そんな彼らの前を、マクゴナガル先生はいつもの落ち着きを失って行ったり来たりしていた。

「こんなことは、私が教員になって35年間1度もありませんでした。ええ、そうです。生徒5人が一斉に抜け出すなんて事は、ただの1度も!」

 マクゴナガル先生は全てに腹を立てていた。クリス達がベッドを抜け出した事にも、捕まえた5人の内4人もが自分の寮の生徒だということにも、脱走を防げなかった自分の愚鈍さにも、そしてその脱走の理由にも。

「だいたいの察しはついています。ポッター、グレイン、グレンジャー、あなた方はドラゴンなんて馬鹿げた嘘でマルフォイを騙し、陥れようとしたんでしょう。そしてこそこそ物陰に隠れ、マルフォイが捕まるのを見て嘲笑っていた――なんと浅ましい!」

 違うと言いたかったが、クリスの唇はまるで接着剤でくっついてしまったみたいに、開く事ができなかった。それはハリーもハーマイオニーも同じだった。2人とも口をつぐみ、下を向いて震えている。マクゴナガル先生はその無言を肯定と取った。

「そして哀れなロングボトムは、こんな作り話を信じてあなた方を探しに回った。――どんな気分ですか、あなた方の嘘で、友人が振り回される姿を見るのは。もっとも、あなた方にとってはさぞかし滑稽に映ったことでしょう」

 それも違うと叫びたかったが、口を開こうとすればするほど、クリスの唇は固く閉ざされてしまう。横を見ると、ネビルが涙を必死に堪えていた。こんな暗い城内を、3人を探して独りでさ迷っていたんだ。それなのにこんな結果になってしまって、クリスは身を引き裂かれるように辛かった。

「あなた方には失望させられました。ミス・グレンジャー、貴女はもっと賢い生徒だと思っていましたよ。ミスター・ポッター、貴方にとってグリフィンドールとは、もっと価値のあるものではなかったのですか?ミス・グレイン、このことを天国にいる貴女のお母様が知ったら、どんなに嘆き悲しむ事でしょう」

 マクゴナガル先生のこの言葉は、それぞれの胸に深く突き刺さった。いつもはぬくもりを感じる召喚の杖が、この時ばかりは冷たく感じた。
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