第30章 【チャーリーからの手紙】
クリスはここが医務室だということも忘れて大声をあげた。交渉が決裂したにもかかわらずドラコはドラゴンの事を誰かに話した様子は無かった。しかし奴がこんな所で引き下がるはずがない。クリスはそろそろ何か動きを見せてくる頃じゃないかと、ずっと心配していたのだ。
「それで、ドラコはどうしたんだ?」
「あいつマダムに僕の教科書を借りに来たなんて言って、本当は僕を笑いきたんだよ。しかもそれだけじゃない、何に噛まれたかマダムにばらすって脅すんだ。……僕はマダムに“大きな犬に噛まれた”って言っておいたけど、多分信じてないだろうし。最悪だよ」
「まあ毒を持つ犬なんていないしね」
「はあ~……こんなことならクィディッチの試合の時、あいつをぶん殴らなきゃよかったよ」
「心配しないで、今週の土曜には全て終わるのよ」
ハーマイオニーはロンを慰めようとしたが、かえって逆効果になってしまった。ロンは一瞬まぶたを大きく見開くと、勢いよくベッドから跳ね起きた。
「……そうだ、土曜0時……忘れてた、どうしよう」
「落ち着いてよロン、何があったんだよ?」
「手紙だよ、チャーリーの手紙を教科書に挟んだままだったんだ。ああ……まずいよ、マルフォイのやつに計画が全部ばれちゃったよ」
最悪の結果だ。3人は口をあけたまま声を出す事も出来なかった。医務室に静寂が戻ると、マダム・ポンフリーは話が終わったと思ったのか、クリスたちを医務室から追い出してしまった。
仕方なく談話室に戻った3人は、今後の事について話し合った。
「今さら計画は変えられないよ。向こうの都合だってあるだろうし、これ以上ノーバートをハグリッドの家に置いておくわけにはいかないんだ」
「でも危険よ。もしマルフォイが告げ口したらどうするの?」
「どうせこっちは透明マントの中だ。慎重にやれば、きっと見つからないよ」
確かにハリーの言う通りだった。ルーマニアまでふくろうを飛ばしている間に土曜日はやってきてしまうし、これ以上あの凶暴なドラゴンをハグリッドの傍においておけば、ハグリッドの生死すら危うい。
次の日、チャーリーの手紙の内容を伝えにハグリッドの小屋まで行った時、ハグリッドもファングも包帯を巻いた痛々しい姿に変わっているのを見て、3人は一刻も早く土曜日がきてくれることを心から願わずにはいられなかった。